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リアルなキャラクターに感情移入し、“死後の世界”を擬似体験――禁断の実験を描くリメイク版『フラットライナーズ』の見どころ

2017.12.21 by

この記事は1年以上前に掲載されたものです。

「人は死んだらどうなるのか?」という疑問は結構多くの人が思い浮かんだことがあるんじゃないでしょうか。心臓が止まった瞬間から“無”になるのか? でも、心臓が停止してからも脳が活動していたら……? 12月22日よりいよいよ公開となる映画『フラットライナーズ』は、心臓停止後の数分間に脳が見せる“死後の世界”を確かめるために、自らの身体で臨死実験を行った医学生たちの味わう“予期せぬ恐怖”を描きます。

今作は、キーファー・サザーランド、ジュリア・ロバーツ、ケヴィン・ベーコンという豪華キャストで1990年に公開された同名映画のリメイクにあたる作品。世紀の発見のために臨死実験を持ちかける発端の人物は、キーファーからエレン・ペイジへとバトンタッチ。キーファー演じるネルソンは、実験前に「死ぬのに良い日だ!」なんて言ってみせるどこか軽さのあるキャラクターでしたが、エレン・ペイジ演じるコートニーは強さの裏に弱さが垣間見える少し複雑な人物。世紀の発見のためと思われた実験にも、実は別の期待を抱いているようで……。ストーリーのベースはオリジナル版と一緒ですが、細かな変更が加わって、より感情移入しやすいものに。そして映像も没入感あふれるものへとパワーアップしています。

あらすじ

人間の心臓が停止しても、脳はまだ数分間活動を続けている。そこに“死後の世界”のヒントがある――。優秀な医学生のコートニーはその“脳が見せる死後の世界”を自ら体験しようと、同級生らに禁断の臨死実験へ協力を要請。「もし蘇生できなかったら?」「脳に障害が残ったら?」「この実験が学校にバレたら?」 想像しうる数々の危険を顧みず、意志を曲げないコートニーは同級生らを半ば巻き込む形で実験に臨みます。

実験終了後、死後の世界を見て蘇生されたコートニーは、どこか地に足がつかない様子。「こんな危険な実験は二度とするまい」と思う仲間たちでしたが、その後コートニーが秘められた能力を覚醒させたかのように異常なまでの記憶力を発揮し、ぐんぐんと成績を上げていくのを目の当たりにして、死後の世界を見ることに興味を持ち始めます。そして、実験後に起こるおそろしい“副作用”になど気付かないまま、ひとりまたひとりと実験体に。それも張り合うように心臓停止時間を延ばしてしまいます。

そんな彼らが対峙することになるのは、彼らが必死にフタをして、見て見ぬふりをしてきたものだったのです――。

見どころ1:感情移入してしまうリアルなキャラクターたち

『フラットライナーズ』の魅力を後押ししているのは、実験に臨む学生たちを「こういう人、いる!」あるいは「自分もそういうところがあるかも」と思わせる、身近でリアルなキャラクターに仕上げたところ。医学的な興味のために“死んでみる”学生にはなかなか感情移入しにくいかもしれませんが、今作は自分の身に置き換えられるような人間らしいキャラクターを作り上げることで“彼らの目線”で臨死実験とその末路を疑似体験できるように作られています。

ごく冷静に見えて自分の弱さをひた隠しにしているコートニー。美人で頭もいいがユニークで人に好かれるマーロー。女の子が大好きでチャラいけれど根はいいヤツのジェイミー。母親からのプレッシャーに押しつぶされそうなソフィア。そして、社会経験もあり誰よりも落ち着いていて知識もあるお兄さん的存在のレイ。それぞれが、日ごろ表には出さない“弱さ”を抱えています。そしてそれにより、臨死実験に対して「これまで目覚めることのなかった自分の能力を覚醒させられるかも」という期待を抱いてしまうのです。

見どころ2:リアルな設定と映像で没入する“死後の世界”

この物語を信憑性のあるものにするために、科学や技術の内容を現代的なものにアップデートし、徹底的に医学的根拠にこだわって細部を作り上げたというニールス・アルデン・オプレヴ監督。脚本も、「まだよく知られていない部分の多い“脳”に、“臨死体験を作り出す領域”があったとしたらどうなるか?」という発想をもとに、医学の専門家や神経学者への細やかな取材のうえで書かれているのだそう。

筆者はさすがに医学的な知識はないので「一切間違いはなかったぜ」と証言はできませんが、心停止状態を作り上げ、そこから蘇生させる臨死実験の過程とその緊迫感には圧倒されました。ついさっきまでおしゃべりしていた学生らが、心停止後、つまり“死んだ”ときに見せる“無”の表情にはゾッとさせられます。

そうして出来上がった今作、なんといっても注目なのが“死後の世界”の映像でしょう。オリジナル版は夢で見ている世界のような雰囲気でしたが、今作では過去の記憶と想像力が暴走したかのような、自然と見入って没入してしまう、魅惑的でどこか恐ろしいトリップ感のある映像になっているのです。この迫力の映像は、ぜひとも劇場で観て、いや“体験”してほしい理由のひとつですよ。

オリジナル版を観ている人も観ていない人も

オリジナル版から30年近く経っていますから、前作を観ている人、観ていない人、観たけど展開を忘れちゃった人、さまざまいると思います。すでに興味をお持ちの方は是非観ていただくとして、「オリジナル版観てるし展開も覚えてるから、リメイク版はどうしようかな」とお悩みの方にもうひと押し。今作、なんという気の利かせ方でしょうか、“オリジナル版を観ているからこそ余計に驚く展開”も盛り込まれてます。ネタバレになるのでこれ以上は言えませんけどね……。

「内容に興味を持ったからオリジナル版も観てみたいな」という方はオリジナル版→リメイク版の順に観ると作品の進化を感じられて面白いかもしれません。キャラクターや設定、映像表現の変化を見比べてみるのもいいですね。オリジナル版の主人公を演じたキーファー・サザーランドが教授役で出演しているのもポイントです。もちろん、物語の展開に新鮮に驚きたいなら、オリジナル版を観ずに今作から観に行くのもOK!

冬休みのお出かけの候補になりましたでしょうか?
映画『フラットライナーズ』は12/22よりTOHOシネマズ六本木ほか全国にてロードショーです。 どうぞ、お楽しみに!

『フラットライナーズ』
監督:ニールス・アルデン・オプレヴ(『ミレニアム ドラゴン・タトゥーの女』)
製作:マイケル・ダグラス(『ウォール・ストリート』)
出演:エレン・ペイジ(『X-MEN:フューチャー&パスト』)、ディエゴ・ルナ(『ローグ・ワン/スター・ウォーズ・ストーリー』)、ニーナ・ドブレフ(『トリプルX:再起動』)、ジェームズ・ノートン、カーシー・クレモンズ、キーファー・サザーランド(「24 – TWENTY FOUR -」シリーズ、オリジナル版『フラットライナーズ』)
公式サイト:http://www.flatliners.jp/

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