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【インタビュー】ヨン・サンホが語る『呪呪呪/死者をあやつるもの』のユニークなゾンビのアイデア、“ゾンビもの”への想い

2023.02.09 by

この記事は1年以上前に掲載されたものです。

“ジェチャウィ”と呼ばれる、呪術で操られたゾンビが凄まじいアクションを繰り広げるホラーエンタテイメント『呪呪呪/死者をあやつるもの』が2月10日より公開。原作・脚本を手掛けたヨン・サンホ(『新感染 ファイナル・エクスプレス』、ドラマ「地獄が呼んでいる」)がリモートインタビューに応じてくれた。

ドラマから映画への発展、ジェチャウィのアイデア、ゾンビものを作る魅力、ゾンビドラマ「今、私たちの学校は…」の監督とのエピソードなどについて語ってくれている。

「映画を観てドラマが気になってもらえたら嬉しい」

この映画は、『謗法 ~運命を変える方法~』というドラマ(日本ではNetflixで配信中)の世界観を拡張したものだ。ドラマでは、正義感の強いジャーナリストのジニと、人を呪い殺すことができる呪術師の少女ソジンという一風変わった取り合わせの二人が、巨大企業の仮面をかぶった強大な悪に立ち向かうさまを描いた。正義も悪も“呪い”というダークな武器を用いて互いを葬らんとする壮絶な戦いが大きな見どころで、隠された真実を少しずつ明らかにしていく作りにグイグイ引き込まれてしまう。

今回の映画『呪呪呪/死者をあやつるもの』では、“死体”が殺人を犯すという奇妙な事件が発生し、ジニとソジンが再び力を合わせて真相究明と事件解決に臨む。ドラマ版のあとの世界が舞台となっており、いわば続編映画だが、ドラマを観ていなくても問題なく観られるように作られている。また、映画の後にドラマを観て、キャラクターたちの過去を掘り下げるのも楽しい。

ヨン・サンホドラマを観ていなくても楽しめる作品に、ということを心がけていました。そして、映画を観た上でドラマが気になって観てもらえたら嬉しいなと。本来ドラマと映画というのはかなり違うメディアではあるんですが、その壁がなくなってきつつあります。ドラマと映画でどれだけお互いを補完し合えるかということを試みる、そういう仕事になったと思います。

ドラマは全16話という長いものだったので、視聴者が“これはここにつながるのでは?”といった具合に、物語の鍵となる要素を自ら探し出して楽しめる作りにしていました。一方で映画というのは限定的な時間のなかで完結するものですから、アクションなどの視覚的効果を入れようと。シリーズ化を前提とした長めの物語にすることもできたのですが、アクションを加えることで単体で充分に面白いものを作れるだろうと考えたのです

“ジェチャウィ”のアイデア

そうして本作に加わったアクション要素が“ジェチャウィ”というゾンビである。呪術によって操られている死体で、当人に意思はないが話すことも車を運転することもできる。それぞれのジェチャウィが使命を持ち、使命を果たすまでその動きを止めない。人間のタガを外してしまったかのような恐るべき身体能力が特徴だ。

ヨン・サンホ「今作を作るにあたって、韓国に昔からある民族的な伝説などの資料を集めました。そのなかでたどりついたのがジェチャウィです。いわゆるゾンビですが、ジョージ・A・ロメロ作品のようなウイルスによって感染するゾンビとは違って、ブードゥー教のゾンビに近いものです。

この映画におけるジェチャウィについて、私とキム・ヨンワン監督はかつての香港のキョンシー映画に出てくるキョンシーのような存在であってほしいという話をしていました。キョンシーというのはユニークな動きをしますが、ホラー映画の中でそういったキャラクターが出てくることでより面白さが感じられたのではないかと。それで、私と監督と振り付け師とで、私たちが作り上げるジェチャウィはどういう動きをするべきだろうかということを相談してできたのが今回のジェチャウィなんです。

ジェチャウィの記載があったのは韓国の「慵斎叢話(ようさいそうわ)」という書物なんですが、面白い点がありました。“手足が黒くなっている蘇った死体である”という説明に加えて、“実際は生きた人間が人を騙そうとして手足を黒く塗ったものである”とも書いてあったんです。色んな妖怪などの存在が書かれている本で、他のものに関してはわざわざ“嘘だった”などという記載はないのに、なぜジェチャウィに関しては書いてあるのか。もしかして外国から伝わったものだから嘘だということにしたのでは?と考え、それが劇中の設定にも反映されています」

「ゾンビものは私にとって魅力的なジャンル」

ヨン・サンホがかつて手掛けた映画『新感染 ファイナル・エクスプレス』では、“ゾンビ映画を初めて観る人”を観客として想定。ゾンビものの基本的な面白さを押さえながら、限定的な状況におけるアクション、感動的なドラマといった要素を盛り込み、韓国で国民的なヒットを成し遂げた。同作以降、韓国のゾンビ作品を目にする機会がぐっと増え、中には劇中のセリフで同作に触れているものもあり、その存在がいかに大きかったかを思い知らされる。この大成功ののちに新たにゾンビ作品を作る心持ちと、自分の作品が与えた影響をどう思っているのかについて伺った。

ヨン・サンホ「『新感染 ファイナル・エクスプレス』はすごく成功しましたから、新たな作品を作るにあたってプレッシャーがなかったわけではありません。でも、ゾンビものを作る面白さが勝っていましたね。私にとって、とても魅力的なジャンルなんです。現代に生きる人間の姿を色んな形で、しかも極端な表現すらも用いて描くことができる。本当に色んな要素を詰め込むことができる、優れた“器”だと私は思っています。

他作品への影響に関しては、私はたまたま運良く、他の人よりも早くゾンビ作品を作れただけじゃないかなと思っているんです。『新感染 ファイナル・エクスプレス』の前にも、韓国でもゾンビ作品が色々と企画されていたはずです。他の作品もいつかは作られる、作られるべくして期を待っていた作品なのです。ドラマ「今、私たちの学校は…」の監督は私に連絡をくれて、“ありがとう、『新感染 ファイナル・エクスプレス』のおかげでこの作品を作れるようになったよ!”と言ってくれました。私は実際、ウェブマンガの「今、私たちの学校は…」を読んでいて、そこから『新感染 ファイナル・エクスプレス』についてのアイデアを得たところもあるのです。誰が先で、誰がすごいということもなく、すべてのゾンビ作品は作られるべくして作られたものだと思っていますよ」

『呪呪呪/死者をあやつるもの』
2023 年 2 月 10 日(金)新宿バルト 9 他にて公開

監督:キム・ヨンワン
原作・脚本:ヨン・サンホ
キャスト:オム・ジウォン「シスターズ」 、チョン・ジソ『パラサイト 半地下の家族』、チョン・ムンソン 、キム・イングォン 、コ・ギュピル
提供:CJ ENM 制作会社:クライマックス・スタジオ
共同制作:CJ ENM、スタジオドラゴン、キーイースト
配給:ハピネットファントム・スタジオ

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