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1月24日より公開となったホラー・オムニバス映画『V/H/S ネクストレベル』。去年公開の『V/H/S シンドローム』の続編となる今作は、今後のホラー映画界を牽引していくであろうクリエイターたちが参加していることでも話題です。
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この公開を記念して、『ZOMBIE手帖ブログ』を運営する伊東美和さん、『TRASH-UP!!』編集長の屑山屑男さんが“2014年のホラー事情”と題し、トークショーを開催。今作の参加監督を解説しました。
今のうちに注目しておきたいクリエイター、観ておきたい作品の話も盛りだくさん。どうぞじっくりお読みください。
ウィンガードの作品にはホラー関係者が多数出演している
監督:アダム・ウィンガード 『PHASE I CLINICAL TRIALS』
カメラ付きの義眼を埋め込んだ男が、自宅で頻繁に霊を目撃するようになる。
伊東:アダム・ウィンガードは去年日本で劇場公開された『サプライズ』も面白いですね。インディーズホラー界の関係者が結構出ていて。冒頭で殺される役がラリー・フェッセンデン。『ステイク・ランド 戦いの旅路』(日本未公開・DVD発売中)とか『セール・オブ・ザ・デッド』(日本未公開・DVD発売中)とか、低予算なんだけどおもしろい映画を作ってる。あと長女の彼氏役がタイ・ウェストっていう監督です。日本ではあんまり作品が公開されてないですけど、『キャビン・フィーバー2』と『インキーパーズ』なんかを手がけてます。
屑山:『キャビン・フィーバー2』、ぼく大好きです!
伊東:タイ・ウェストはイーライ・ロスがプロデュースの『ザ・サクラメント』(2014年・日本公開予定)っていう新作も控えてますね。“カルト教団の集団自殺に取材クルーがたまたま居合わせてしまう”という。
屑山:これ評判いいですねぇ。
屑山:ウィンガードの『ビューティフル・ダイ』(2013年・日本公開)はまあまあでしたけど、その前の『ポップ・スカル』(日本未公開)っていうやつが大好きなんですよね。ちょっとアート系の作品で、暗い青春映画みたいな。『地球最後の男たち』(日本未公開・DVD発売中)っぽい感じです。
伊東:『地球最後の男たち』っていうのはインディーズ・ホラー界では重要な作品ですね。あらゆる電気機器からノイズが出て、それを聴いた人が凶暴化するという“終末ゾンビもの”。これ、3人の監督が3つのパートに分けて撮っていて、その一人であるデヴィッド・ブルックナーが『V/H/S シンドローム』に参加してますね(※カメラ付眼鏡をかけてパーティーに出かけるエピソードの監督)。
あと出演してたA.J.ボーウェンは『サプライズ』でヒロインの恋人役で出てますし、タイ・ウェストの新作の『ザ・サクラメント』にも出てる。だから彼らの顔を覚えておくといろいろ繋がってて楽しいと思います(笑)。
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『ブレア・ウィッチ~』の監督はPOVが苦手?
監督:エドゥアルド・サンチェス、グレッグ・ヘイル 『A RIDE IN THE PARK』
カメラ付きヘルメットを付けてサイクリングしていた男が、突如ゾンビに噛まれゾンビ化してしまう。
伊東:エドゥアルド・サンチェスとグレッグ・ヘイルの手がけたゾンビのエピソード。最近ゾンビもの結構出てますけど、これが2013年度のベストだったなと(笑)。これさえ観れば十分だと思ってます。笑いもあり、悲哀もあり、スプラッターもあり。監督にもそれを伝えたんですけど、「脚本家が考えた話だから、俺たちはよく分からない」って引いてた(笑)。
屑山:この監督コンビは『ブレア・ウィッチ・プロジェクト』でPOV(主観映像)方式を広めた人たちですね。
伊東:ちなみに本人はPOVは苦手で、見てたら気持ち悪くなるから後ろのほうで見るという(笑)。
屑山:この監督、そんなに他に面白いのがないんですけど、『V/H/S』のエピソードは本当に面白かったですね。
伊東:本人曰く『V/H/S』のこのエピソードが「『ブレア・ウィッチ~』以来、久しぶりにファウンド・フッテージものを撮ったぞ!」って豪語してたんですけど、ほかの作品も結構ファウンド・フッテージなんですよね(笑)。
屑山:(笑)。
伊東:彼は次回作も完成してるみたいですね。今度は昔から撮りたかった“ビッグフット”を題材にした、ファウンド・フッテージものだということです(笑)。
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進化しないインドネシア・ホラーと、新風を吹き込むクリエイター
監督:ティモ・ジャイアント、ギャレス・エヴァンス 『SAFE HAVEN』
ドキュメンタリー映画のスタッフがカルト教団の施設を取材すると、事態は思いもよらぬ方向へ転がっていく。
屑山:つぎは『SAFE HAVEN』ですけど。ギャレス・エヴァンスとティモ・ジャイアントの、インドネシアの監督コンビですね。
伊東:『マカブル 永遠の血族』(DVD発売中)っていうインドネシアのスプラッターを撮ってますけど。若者たちが人喰い一家の家に行って殺されるという。
屑山:あれむちゃくちゃおもしろいですよね?
伊東:ぼくはちょっと退屈もしたんですけど。インドネシア・ホラーのイメージが、最後に幽霊とか悪魔が説教したりするような作品のイメージで止まってたので(笑)。 それがフレンチスプラッターからの影響も感じさせる描写も入れ込んできたので、新しくなったなと思いましたね。
屑山:インドネシアのホラーって今でもあんまり進化してないんですって。だからそれが嫌でしょうがなくって、しゃれた感じを盛り込んでいったという(笑)。
伊東:この2人の『SAFE HAVEN』なんですけど、POVのはずなんですが途中で誰のカメラなんだか全然分かんなくなったり、人が爆発したりするんだけど意味が分からなかったり、そういうところも含めて勢いがあってよかった。
屑山:登場するモンスターの造形も古臭くてよかったですね(笑)。
伊東:東南アジアホラーのバカっぽいパワーを受け継いでる感じがして(笑)。エドゥアルド・サンチェスとグレッグ・ヘイルに聞いたら、このエピソードは推してましたね。グレッグ・ヘイルはトラウマになったらしいです(笑)。
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アイズナーの作品はトロマっぽい?
監督:ジェイソン・アイズナー 『SLUMBER PARTY ALIEN ABDUCTION』
両親が出かけたあと、ここぞとばかりにバカ騒ぎをはじめる悪ガキたち。そんな彼らのもとに、光りに包まれた襲撃者が現れる。
伊東:最後のエピソードを手がけたのがジェイソン・アイズナーですね。彼が『ホーボー・ウィズ・ショットガン』を手がけたときにインタビューしたんですけど、日本で言えば『映画秘宝』読んでそうなボンクラ兄ちゃんなんですよね(笑)。そのとき「あなたの映画、トロマ映画に似てますね」って言いたかったんですけど、人によっては腹立つかなと思って言わなかった(笑)。でも実際トロマ好きみたいですね。
彼は『ホーボー~』を撮る前に『ツリー・リベンジ』っていう短編を撮ってて。ツリーにされるために切られたモミの木が復讐するという(笑)。これの映画版の話もあったんだけどなかなか進まないですね(笑)。
ジェイソン・アイズナー短編『ツリー・リベンジ(Treevenge)』 動画ページ
※かなり面白いです。これはトロマっぽい! ただしグロ注意。
『V/H/S』シリーズ以降、オムニバス・ホラーは増えている?
屑山:トータルで見たら今作は満足度高かったですね。
伊東:『V/H/S シンドローム』よりも面白くなってますよねぇ。それに参加してたタイ・ウェストは僕の大好きな監督ですけど、『ABC・オブ・デス』にも参加してました。彼の作ったエピソード覚えてます?
屑山:覚えてない……。
伊東:妊婦さんがトイレに赤ちゃん産み落として終わりってやつです(笑)。
屑山:(笑)。 『ABC・オブ・デス』や『V/H/S』シリーズ以降、オムニバスホラーって増えてるんでしょうか?
伊東:話はぼちぼち出てきてますね。『ABC・オブ・デス』の続編もありますし、実現するか分からないですけど、イタリア・ホラー界のオールスターが手がけるホラーオムニバスなんて話も……。
屑山:イタリアといえば、2月にダリオ・アルジェントの新作の『ドラキュラ』(2014年3月・日本公開予定)もありますね。
伊東:あ、あれ結構好きですよ! 画面が結構明るいのが気になりますけど(笑)。
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