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マスク姿の殺人鬼マイケル・マイヤーズを描くシリーズ最新作『ハロウィン KILLS』が10月29日よりいよいよ公開。ジョン・カーペンター監督が生んだ伝説的ホラー映画『ハロウィン』(78)の、40年後を描く同名続編『ハロウィン』(18)が大ヒット。今回の作品は、その更なる続編となっている。デヴィッド・ゴードン・グリーン監督によるこの続編シリーズは3部作となる予定で、最後を飾る『HALLOWEEN ENDS』(原題)の製作がすでにアナウンスされている。
第一作目でマイケル・マイヤーズが殺し損ね、その後も執着し続けることになる生存者ローリー・ストロードを長年演じてきたジェイミー・リー・カーティス、そしてローリーの孫アリソンを演じるアンディ・マティチャックがリモートインタビューに応じてくれた。短い時間ではあったものの、前作のあの名シーンの手応えや、マイケルとの兄妹設定がリセットされた心境などを語ってもらった。
「写真:ベネチア国際映画祭でのジェイミー・リー・カーティス」
前作『ハロウィン』(18)では、殺人鬼に殺されかけたトラウマに長年苦しんでいるローリーのドラマが描かれていた。なかでも話題となったのは、ローリーとその娘カレン(ジュディ・グリア)、そして孫のアリソンが、マイケルを窮地に追い込む熱狂のクライマックスだ。日本の観客からも熱く支持されたあのシーンには、演じた当事者として、どんな印象を抱いたのだろうか。
ジェイミー・リー・カーティス(以下、ジェイミー):あれはとても素晴らしいシーンだったと思います! ぴったりのエンディングだったし、すごくエキサイティングでした。あのシーンで、マイケルが地下室の鉄格子のすき間からこちらを見上げている瞬間がありますが、あれは私から見て、初めてマイケルの脆さを感じさせるシーンでしたね。「失敗してしまったんじゃないか」と動揺しているような、人間的な感情が見えた感じがしたんです。とはいえ、悪いことを散々やってきた人物なので、そこから彼がどうなろうと構いやしないんだけどね(笑)。見応えのあるエンディングになったと思うし、それを見て日本のファンが熱狂してくれているのはとても嬉しいですね。
アンディ・マティチャック(以下、アンディ):あの3人はお互いに合わないところもあるんだけど、あのシーンではそういった違いを乗り越えて、力を合わせるのが素晴らしいですよね。3世代の女性が団結することで、とてもパワフルなシーンになったと思っています。
ジェイミー:例えばの話ですが、失読症の子供がいたとしますね。それが発達障害なんだと両親が気付くのに時間がかかったとする。そしてようやくそれを理解したときに申し訳なかったと思う。そういう人たちをたくさん見てきているんだけど、この映画ではその逆のことが起こっているんですね。娘のカレンや孫のアリソンがあるとき気付くわけです。「ローリーの言っていたことは本当だったんだ」と。それも、夫と父を失うという悲しいやり方でね。その想いがリアルに伝わるシーンになったと思っているんです。なぜなら、演じている私自身が、二人の俳優からそのエネルギーを感じられたから。だからこそあれはパワフルなシーンになったんじゃないかな。
ローリーにフォーカスした前作から打って変わり、今作では、惨劇の舞台となったハドンフィールドの住人たちにスポットを当てる。一作目のキャラクターが多数再登場しているのだが、ローリーと同じくトラウマを抱えてきた彼らも、マイケルを野放しにはしておかないのだ。しかし、個人ではなく集団になることによって、思わぬ事態を巻き起こす。そういった群集心理の怖さは、SNSの隆盛やコロナ禍で身に沁みて感じられるとても身近な題材だ。
アンディ:この作品は信じられないほどタイムリーなんです。社会がこういった状況になる前に書かれて作られたものなんですが、監督を始め脚本チームがいかに“今”という時代にシンクロしているか、ということの証拠でもあります。今の世界には恐怖心で突き動かされている人々がいる、それってとても危険なことだと思うんです。それがこの映画で描かれるもっとも怖い部分であるとも思っています。
ジェイミー:私も彼女と同じ意見ですね。書いているのは男性の脚本家たちだけれど、前作は女性のトラウマを描いた映画だと思っています。あの映画は2016年の終わりから2017年にかけて作られて、2018年に公開されました。ちょうど同じタイミングで#MeToo運動が始まったんですよ。だから、その内容とムーブメントの流れがどこかでひとつになって、それによって映画自体が加速していったところがある。それと同じようなことが今回の作品でも起きていて。怒りや恐怖心を覚えた人々が集まったことで、暴動につながってしまう。そういう群衆心理ですね。グリーン監督には先見の明があって、社会で起こることが直感的に分かっているんじゃないかと思わされます。そういうことが前作でも今作でも起こっているのがすごく面白いですよね。今から20年くらい経って振り返ったときに、今回の3部作はこの時代の社会で何が起こっていたのかを如実に描いた作品になると思いますね。
今回の続編シリーズは、過去に作られたシリーズ作をリセットし、一作目の設定のみが残されているのが大きな特徴だ。そこで、1981年製作の『ハロウィンII』で持ち込まれたマイケルとローリーの兄妹設定もリセットされることとなった。IIで脚本を書いたジョン・カーペンターは、この設定は続編を作るための苦肉の策だったことを後年明かしている。長らく浸透してきた設定だけに、愛着を持っているファンもいるが、当のジェイミー・リー・カーティスはどのような印象を持ったのだろうか。
ジェイミー:すーごく嬉しかったですね! 前作の冒頭、アリソンが友達と一緒に学校へ向かって歩いているシーンがありますね。そのとき男の子が「殺人犯は(ローリーの)兄貴だったらしいじゃないか」と言って、アリソンが「それは誰かの作り話よ」と否定するセリフがあります。あのたった一言で、すべてがチャラになったんです! そうして私たちは前に進むことができた。それはとても喜ばしいことでした。じゃあなぜマイケルはローリーを追い続けるのか。そこに彼のオブセッションを感じますよね。
『ハロウィン KILLS』
10月29日(金)、TOHOシネマズ日比谷、渋谷シネクイントほか全国公開