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学生が制作した“人体破壊描写”のある短編作品を募り、映画関係者らが審査するユニークな映画祭『学生残酷映画祭』が今年も新宿ロフトプラスワンにて開催された。毎年冬に開催されるこのイベントは今年で8回目。第1回目では、『先生を流産させる会』、実写版『ライチ★光クラブ』などで知られる内藤瑛亮監督を輩出している。
今年はゲスト審査員として、『貞子VS伽倻子』や『コワすぎ』シリーズの白石晃士監督、『クソすばらしいこの世界』や『ドクムシ』の朝倉加葉子監督が登壇。別冊映画秘宝編集長・田野辺尚人さん、イラストレーターで映画評論家の三留まゆみさんも、昨年に続き審査員を務めている。
審査員から参加者へのアドバイスこそ優しくも、ヌルい審査は一切行わないこの映画祭では、2年連続でグランプリが出ていなかった。がしかし、今年は遂にグランプリ賞品である“学生残酷映画祭謹製オノ”を手にするツワモノが現れた。クレイジーなカップルが自分たちを邪魔する輩を容赦なく殺害するスプラッター『べー。』を手掛けた阪元裕吾監督だ。その内容の過激さとは裏腹に穏やかな印象の阪元監督は、今作のなかでもインパクトのある“妊婦を吊るし上げるシーン”を思いつき、そこから物語を作りあげていったという。クライマックスにむけて純愛物語へと展開していくシナリオを、辛口の審査員をも唸らせる映像センスで魅せ、白石監督も「芝居の撮り方が自分よりうまい。嫉妬しました」と賞賛を贈った。阪元監督にはグランプリのオノの他に、キングレコードの『ホラー秘宝』DVDに収録される短編映画を撮る権利と予算が与えられる。今回のグランプリは満場一致ではあるものの、“さらなる高みの人体破壊描写”を追求してほしいとして、「必ず来年も出品するように」との指令が課せられている。
今年は“審査員特別賞”という臨時の賞が設けられ、篠原三太朗監督の『ニクノクニ』が受賞。自殺したガールフレンドの後を追い自らも命を絶とうとする少女が、人里離れた呪いの食人村へと迷い込む物語。主人公カップルの男役俳優のドタキャンによって監督(女性)自身が男役を演じたり、それに合わせてキャストの性別を強引に転換させるなど、ハプニングをアイデアと勢いと実行力で乗り越え、形となった作品だ。不条理ながらも強引に突き進んでいくストーリーと演出に審査員らも「一体何を観たんだ?」と呆気にとられるも、その分強烈に印象に残る作品となったようだ。最終的に「ユニークで力強い作品」との評価を受け、今回の受賞へと至った。今作は未公開映画発掘DVDレーベル『HIGH-BURN VIDEO』が独断で贈る“HIGH-BURN VIDEO賞”も受賞している。受賞理由は「一番ヘンテコだったから」とのことである。篠原監督は、今年開催された東京スクリームクイーン映画祭2016 ジャパンマッドネス部門でも作品が上映されている。
この他、就職活動の失敗により自殺した女性がゾンビとなって面接官を襲うというストーリーで、“時代性が反映された作品”として評価された『私の夢』や、“学生時代に制作した作品なら出品できる”というルールに則って出品された80年代の8ミリビデオ作品『流血悪夢』、2年連続で“また来年も出しやがれ”賞を受賞した監督による特別上映作品『V’s manual』が上映された。
映画祭の最後に、田野辺さんは「人体破壊といえばアクション。今年の作品はアクションが足らなかった。アクションによってどんな人体破壊が起こるのか、その描写を追求してほしい」と、未来の出品者たちへリクエストを送った。今年受賞した阪元監督、篠原監督の今後の作品にも期待が高まる。学生たちよ、スプラッターを撮ろう!!
<上映作品一覧>
『流血悪夢』 監督:渡辺靖夫
『ニクノクニ』 監督:篠原三太朗 (審査員特別賞、HIGH-BURN VIDEO賞)
『私の夢』 監督:三重野広帆
『べー。』 監督:阪元裕吾 (グランプリ、観客賞)
特別上映『V’s manual』 監督:平岩諒一
学生残酷映画祭 公式サイト:http://szff.web.fc2.com/