
ホラーなコンテンツやイベントを手掛けてきた株式会社闇による、“記憶”にスポットを当てた奇妙な体験型展覧会「記憶汚染展」が現在開催中だ。(東京・渋谷 BEAMギャラリー/9月6日まで)
ディストピア小説の「1984」のように“記録”は捏造や改ざんされる可能性をはらむが、“記憶”はどうか。事実を頭に留めたはずなのに、いつの間にか曖昧になっている、ときに間違っていることもある――そんな記憶のあやふやさを実際に体験するのがこの展覧会だ。
一見ホラー要素はなさそうだが、常に体験者をビクつかせてきた株式会社闇のやることである。何かしら怖い要素があるんじゃなかろうか……。
現地で確かめた結果……後半がじわりと怖かった。
自分の記憶で“正しい”を決める
会場内は全五章に区切られている。
最初に黒丸のシールが配布され、自分のなかの“正しい記憶”と合致する展示物にシールを貼っていく。決してクイズではないので、会場内で正解は明かされない。あくまで「自分の記憶ではどちらが“正しい”か」を決めていくのだ。これが結構ワイワイと盛り上がる。


「パンダのしっぽは白か黒か」「正しいベートーヴェンの肖像画はどれか」……。曖昧な記憶を無理矢理たぐりよせるうちに正解の輪郭がぼやけていき、どれも正しく思えたり、どれも不正解に思えたりする。本展が突きつける“記憶のあやふやさ”をまさしく体験する瞬間だ。
のちに正解を知って分かったことだが、筆者は何度も盛大に間違えていた(チーン)。

記憶したマークを描いてみるコーナーも みんなの苦戦ぶりが面白い
AIがでっち上げる情報たち

続く「ハルシネーション」の章では、AIが出力した“もっともらしい”が不正確だったり存在しなかったりする情報を、様々なアプローチで展示している。
前章では、自分の記憶がいかにテキトーにでっち上げられているかを体験したばかり。AIが出力するでっち上げ(=ハルシネーション)も、人間の脳が行うそれとあまり変わらないのではないかと気付かされる。日頃、Google検索したときに表示される「AIによる概要」のトンチンカンぶりを嘲笑していたが、もはやアレをバカにすることはできない……。

2つの写真から“本物”と思うものを選ぶ どちらかはAIが出力した“それっぽい写真”だ

人々の悪夢のイメージをAI出力し、油彩で描き起こした「怖い絵」 学生の女の子だろうか……
じわりと怖い……「記憶汚染」につながる物語


前半とは趣の異なる後半。展示されているのは、町の一部を撮影した記録映像や、AIとの会話ログ、ラジオの書き起こし、架空の卒業アルバムなどなど、一体何を見せられているのか分からないものばかり。しかし、じっくり目を通していくと“ひとりの少女”の存在が浮かび上がってくる。

AI出力の“存在しない”卒業アルバム シールで隠されているのは……女子学生?
そして意図が分からないこれらの展示が、ここまで体験してきた記憶の曖昧さやハルシネーションとも結びつく、“ある物語”につながっていく。そして、タイトルの「記憶汚染」の意味を身を以て知ることとなる。
詳細は明かせないが、じわりとした恐怖を伴う切なくも奇妙な話なのだ。これまで認識していた現実が揺らぐような、ちょっと不思議な感覚を伴いながら会場を出ることだろう。
『呪詛』や「近畿地方のある場所について」のような“知らず知らずの内に巻き込まれている”系ホラーの趣だが、ホラー演出はなく、あくまで静かな怖さに留められている。怖がりの怖いもの好きにも挑戦しやすい内容と言えそう。
と、実際に体験した“記憶”をもとにレポートを書いたわけだが、これって本当の記憶なのかしら??
「記憶汚染展」
公式サイト:https://kiokuosen.com
会期:2026年8月2日(日)~9月6日(日)
会場:BEAMギャラリー( 東京都渋谷区宇田川町31-2 渋谷BEAM 4F )※渋谷駅徒歩5分
料金:2,300円(税込) ※小学生以上は有料
企画:株式会社闇

何かいる……? 意味が分かると怖い場所

日常に奇妙なものが混ざっている写真
















