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『ドント・ブリーズ2』監督・脚本家インタビュー 「意外性のある続編にしたほうが面白いものができる」

2021.08.12 21:00 by

2016年に公開され、大ヒットを果たした傑作ホラー『ドント・ブリーズ』の続編、『ドント・ブリーズ2』が8月13日よりいよいよ公開される。

前作では、大金を隠し持つ“盲目の老人”の家に強盗に入った若者が、超人的な聴覚と高い戦闘能力を持つ“老人”によって返り討ちに遭う様を描いた。一見被害者に見える“老人”だが、恐るべき秘密を持った異常者であることも大きなポイントだった。

二作目となる今作では、一作目から8年後の老人を描いており、彼が“とある少女”を育てていることが明かされる。少女は何者かに狙われており、“老人”は彼女を必死で守ろうとする。少女は何者なのか、“老人”はなぜ彼女を育てているのか、そして少女を狙う人々は何者なのか――謎は多いが、すべては観てのお楽しみだ。

本シリーズを手掛けているのは、リメイク版『死霊のはらわた』でも話題を呼んだフェデ・アルバレスとロド・サヤゲスのコンビ。前作ではフェデ・アルバレスが監督を務め、ロド・サヤゲスとともに共同で脚本を執筆。今作でも2人が共同で脚本を書いているが、監督をロド・サヤゲスにバトンタッチ。彼の初監督作となった。

このたび、2人が各国メディアの質問に答えるリモートインタビューが実施された。撮影時の工夫や、2作目のインスピレーション、“異常な老人”というキャラクターの発展のさせ方などについて語ってくれた。

記事の後半には、2作目の物語の方向性について触れている解答もある。ネタバレは避けているが、映画を観る前にあまり予備知識を入れたくない方はご注意を。※1作目のクライマックスについてのネタバレはあり

ロド・サヤゲス監督×フェデ・アルバレス(共同脚本) インタビュー


[写真:左/フェデ・アルバレス、中央/ロド・サヤゲス]

■質問:前作と続編で描写されていたアメリカのイメージ、特に舞台となっていた街中はとても殺風景で暗い感じに見えました。これはアメリカあるいは世界の現状を表したものなのでしょうか?

フェデ・アルバレス(以下、フェデ):その通りで、デトロイトを選んだのも、現状――もしかしたら将来をも表している可能性があるからだ。ひと昔前に自動車産業で栄えた地域だが、その後は後退を続けている。撮影した道や家は今もそのままで、映画のために何も変えていない。今作でもそうで、ノーマン(“老人”の名前)はより社会から孤立していることもある。我々は悲観的になっているわけでもないが、映画にはあまり使われない地域をありのままで撮影したかった。

ロド・サヤゲス監督(以下、ロド):両作品のキャラクター全員が、ある意味社会から追放されている。社会に守られていないので生活をしていくために独自のルールを作って生きている。そういう風に暮らしている人はアメリカだけでなく世界中にいると思う。そういう現実の一部を我々のレンズを通して観客に届けている。

■質問:映画に使った、あるいは工夫した“音”(サウンドデザイン)について教えてください。

ロド:ジャンル的にも音はとても重要な要素だった。是非とも映画館で、音も含めて“自宅では得られない体験”を楽しんでもらいたいと思う。実際この映画では音自体がストーリー展開をしている場面もあり、そういう映画だからこそチャレンジしたいと思ってくれた大変有能なサウンドスタッフが集まってきた。この映画にとって音は最も重要な要素の一つであり、そのことが映画の特徴でもある。

フェデ:スペイン人なので言葉(英語)なしで映画を作ろうとした。台詞も少ないので音は確実にこのフランチャイズにとって重要なんだ。我々は英語が苦手だから、特に1作目はどのようにすれば台詞を少なく済ませられるかが課題だった。実際台詞が少ないと静かなので、冷蔵庫や足音など“モノの音”に集中する。今作でロドは音に関して更にレベルアップしていて素晴らしい出来になっている。そういう意味でもぜひ映画館で、ドルビーアトモスで体験してもらいたい。

■質問:監督役をロドに渡すのはいかがでしたか。そしてラテンアメリカ人としての映画業界での活躍について教えてください。

フェデ:バトンを渡すのは簡単だった。私が監督しないと決めたあと、誰にするか検討したが、映画に出てくる人物を知らない外の監督にするのはやめようと決めていた。脚本家から監督になるのは比較的スムーズだ。なぜなら監督として最も重要なのは“物語を伝える力”だから。技術面などについては他のスタッフのサポートがあるが、監督は何よりストーリーをしっかり把握し、そのストーリーのシーンを順不同に撮影していかなくてはならない。ロドはそれに長けている。監督は初めてだったけど、信頼していたし、素晴らしい映画を作った。
2つ目の質問について、我々の責任感は大きい。ラテンアメリカ人はこの業界においてまだまだ足りない。様々な分野のスタッフはいるが、監督や脚本家という意味では足りないし、探すのに苦労もする。業界の受け入れ態勢がないわけではない。ラテンアメリカの国々も人材の育成にもっと力を入れる必要がある。両側の改善が必要であり、そうすればより多くのラテンアメリカ人が、そう望むなら、ハリウッドで働くことができる。アメリカにおけるラテンアメリカ人の人口は多く、観客としての彼らにとってもいいことであると思う。

■質問:1作目のカメラワークは素晴らしかったですが、今作のカメラワークで特に注意したこと、準備したことなどあれば教えてください。

ロド:映画を撮影する際、特定の世界観を作るのに多くのエネルギーを費やす。これは監督にとって最も大変な部分であって、時間もかかる。今回は主人公や雰囲気、カメラの使い方など多くはフェデが既に設定あるいは作ってくれていた。ありがたいことにそこからのスタートだったので、他のことに時間を費やせた。一作目では最初の家のシーンで2~3分間ぐらいの長いシーンがあった。それを元に、数週間かけて作った今作の5~6分間のワンカットシーンがある。多くの演者とアクションが入っているシーンで、時間と労力が必要だったが、それはフェデが土台を作ってくれていたので可能になった。

フェデ:いや、2人の成果だよ。映像に関してはそうかもしれないが、物語自体は2人で作ったのだから。結局映像と言っても、台本に書いたシーンを撮影しているのであって。その長いシーンもそうだ。

ロド:家の中や廊下といった限られたスペースで撮影するのはチャレンジではある。技術面の話は始めると終わらないが、とにかく優秀な撮影監督とチームに恵まれた。

フェデ:ちょっとしたトリビア。撮影監督のペドロ(Pedro Luque)はウルグアイで『Silent House』(『SHOT/ショット』)という作品を作ったが、映画全体をワンカットで撮った。ウルグアイの作品だが、エリザベス・オルセン主演のアメリカリメイク(『サイレント・ハウス』)もできた。ノーカットのシーンがあると、それだけ観客は集中すると思う。

■質問:少女役のマデリン・グレースは11歳ですが、今作のあのような過激なシーンにおいてどのような演技指導をしましたか?

ロド:仕事の95%は彼女がこなしてくれた。11歳だが5歳くらいの時から学校で演劇をしてその後指導も受けている。その過程や手法への理解が深く、その道のプロで本当に驚いた。役者として本当にすばらしい。家庭教師やお母さんも撮影現場に一緒にいて、我々も含め皆でよい環境作りに努力した。我々の仕事は、彼女が仕事ではなくゲームを遊んでいるような感覚になってもらうことだった。その方が時間も早く進む。完成品は過激で暴力的に見えるが、撮影現場はそういう雰囲気は全くなかった。水中にいる彼女を撮影するシーンがあり、苦労するのではと思っていたが、彼女自身はとても楽しんでいてずっと続けていたいようだった。終わってももう一度やりたい、そして翌日もまた同じシーンを演じたいと言われた。それはできないと彼女に説明し、申し訳ない気持ちだった。鍵は彼女にゲームのように思わせることだった。

フェデ:彼女は観客の視点では見てないので、撮影していても怖さは感じない。ホラー映画で演じている子供たちは撮影中、観客が完成品で観る怖いシーンを見ることはないんだ。

ロド:子供なので普段はふざけたりして楽しんでいるが「アクション!」と聞こえた瞬間、役者になる。毎日素晴らしい演技をしてくれて感動した。とても優秀なので映画界での将来の活躍が楽しみだ。

■質問:1作目のエンディングを観て、2作目では“老人”が侵入者の一人の後を追うのかと思いましたが、実際2作目のストーリーは予想外のものでした。何からインスピレーションを受けましたか?

フェデ:1作目が成功して2作目が実現したことはとても幸運に思う。『死霊のはらわた』もそうだったが2作目は比較的内容が想像しやすい。一般的にフィルムメーカーは続編を作る際、簡単な方法を選ぶ。前作と似た内容で、スケール感を大きくする。我々はそうではなく、意外性のある内容にするために努力した。そうしないと面白いものができない。前作に敬意を示しながら新鮮味のある内容にしたかった。そして単体でも楽しめる作品に仕上げたかった。大変ではあったが、作り手としてもそういう仕事の方が面白かったし、常にそのような志を持つようにしている。最大限の力と能力を注ぎ、ベストを尽くした作品を作りたい。1作目のエンディングから想像できる2作目を作るのは簡単かもしれないが、我々が作ったお話の方が想像力も働いていて楽しんでもらえると思う。

ロド:1作目の終わりでは“老人”と侵入者との間で取引がある。お金を渡す代わりに秘密を守る。秘密の取引であり、お互い得るものがあった。その後2作目で“老人”が突然取引をした相手を追うのもおかしなことになるんだ。

フェデ:“老人”は酷いことを沢山して嘘もついたが、その約束は守ると決めていた。逆に、あのエンディングは“老人”のことを警察に通報せずお金をもらい、彼女が正義の道を選ばず魂を売った瞬間であり、それはそれで恐ろしいシーンだと思う。

■質問:一作目において“老人”には同情しうる要素が沢山ありながら、その異常性によって、安易な同情や感情移入を阻むキャラクターになっていました。こういったキャラクターにどんな狙いがあり、また続編でどのように発展させようと思いましたか。

フェデ:一作目は酷いことをする“老人”の話だ。彼は彼の行動を常に正当化しようとするが、そこが興味深いところでもある。彼には説得力があり、許しがたい行動をとった理由を述べ、そうするしかなかったことをアピールする。なので、2作目ではそのような状況から抜け出し、自分がどういう人間で、どういうことをやってきたかを認めなければならないという設定にするのが面白いのではと思った。一作目で彼が最も恐れていたことは、自分が「悪」であること、なぜなら自分はヒーローだと思っていたから。今作では現実と向かい合い、自分の過去を認め、そして自分がどういう人物であるかを理解して認めて欲しい。

■質問:クライマックスのシーンの多くは『スター・ウォーズ』シリーズを思い起こさせます。この映画は『スター・ウォーズ』のオマージュなのでしょうか。

ロド:『スター・ウォーズ』も他の沢山の映画のオマージュであると思う。ジョーセフ・キャンベルの英雄の旅もあるが、英雄の神話は何千年も昔まで辿っていける。どの映画も何かしら『スター・ウォーズ』に影響されていると思う。

フェデ:『スター・ウォーズ』を観たことがない監督が作った映画でない限り、何かしら影響は受けていると思う。

ロド:我々の場合、全く気が付かなかった。とある台詞を書いた後にロドから連絡があって、『スター・ウォーズ』と同じ台詞だと指摘を受けた。分かる人には分かるだろうという思いで台詞は変更せずそのままにした。最後のシーンも『スター・ウォーズ』のシーンと比較できる。インパクトの強い映像なので、無意識に影響を受けている。正直、気が付かなかった。完成した後に似ている要素が沢山あることに気づいた。自然にそういうのが出てしまうのだがそれもうれしい。台詞を聞いて絶対に気づいてくれるコアファンはいると思う。

『ドント・ブリーズ2』
8月13日(金)全国ロードショー

監督:ロド・サヤゲス
脚本:フェデ・アルバレス/ロド・サヤゲス
製作:フェデ・アルバレス/サム・ライミ/ロブ・タパート
出演:スティーヴン・ラング/ブレンダン・セクストン 3 世/マデリン・グレース
原題:DON’T BREATHE 2

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