この男、こう見えてクレイジー。
悪名高き実在の革命家エドワルド・リモノフの愛と破滅の半生を、パンチのある演出で描く『リモノフ』が9月5日より公開。彼の行き過ぎた“求愛”を切り取った、ある意味ホラーな本編映像をご紹介する。
詩人、作家、反体制派、亡命者、執事、ホームレス、兵士、活動家、革命家と、いくつもの顔を持つリモノフ。国家ボリシェヴィキ党を立ち上げ若者を煽動したカリスマだが、今回ご紹介するのは、彼がまだ無名の詩人である若かりし頃を描いたワンシーンだ。
炭鉱夫として働きながら、朗読会に参加して自身の詩を披露していた20代のリモノフ(ベン・ウィショー)。ある日の会で、彼は場違いなほど華やかな9等身美女エレナに一目惚れ。彼女に猛アタックし、一度の逢瀬ですっかりメロメロに。彼女のために自分で仕立てたお手製ジーンズ(!)と薔薇の花束を抱え、真夜中に彼女の家を突撃訪問する。しかしエレナは「何時だと思ってんの、帰って」と拒絶し扉をバタン。映像はその先を切り取っているのだが、次に出てきたのはエレナのムキムキな彼氏であった。夜中にドアをバンバン叩いた末に「エレナと俺は愛し合ってる、邪魔しないでくれ」などとのたまうこのメガネ男子を彼氏はぶん殴り、やっと静かになったと思われたが……。
ここで諦めなかったリモノフ。さらにドアをバンバン叩き、「エレナー!!」と絶叫。酒瓶をかち割ってガラスの破片で手首を切りつけ、あわや自殺か!?と思いきや、壁に血文字でエレナへの愛を表現するのであった……。多くの人がドン引き、あるいは戦慄しそうなこの告白だが、先の予測できない本作では、なんとエレナがこれにほだされてしまうのである。
本作を手掛けたのは『チャイコフスキーの妻』『インフル病みのペトロフ家』のキリル・セレブレンニコフ監督。監督はこのシーンにとても力を入れていたようで、「実はこのシーンの撮影は1日がかりだった。数えられないほど何度も、しかもなるべくワンカットで撮るようにした。結果的に時間と努力を要した渾身のシーンだ。僕もお気に入りさ。『リモノフ』は全部のシーンがアトラクションなんだよ」と撮影当時を振り返っている。ベン・ウィショー、これを何度もやったのか……。
『リモノフ』
9月5日(金)より全国公開
© Wildside, Chapter 2, Fremantle España, France 3 Cinema, Pathé Films.