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ギャグ漫画界の重鎮・相原コージ先生が現在『別冊漫画ゴラク』で連載中の『Z~ゼット~』。原因不明のゾンビウイルス集団感染が巻き起こす、さまざまな泣き笑いのエピソードを描いていくオムニバス・コミックです。
この作品を、なんとJホラーの第一人者である鶴田法男監督が実写映画化。タイトルを『Z~ゼット~果てなき希望』とし、7月26日より公開が決定しています。
映画版は、原作に登場した薙刀を特技とするクールな少女・戸田を主人公に、原作で描かれた多様なエピソードを一本のストーリーにまとめ上げ、ゾンビ感染に翻弄される人々のドラマを描きます。
ギャグありエロあり、絶望あり希望あり、そして最後には“グッ!”と胸を打つこの作品について、原作者の相原コージさん、監督を務めた鶴田法男さんにお話をお伺いしてきました。
相原コージ先生&鶴田法男監督インタビュー [ホラー通信]
(聞き手・レイナス)
――鶴田監督は数々のJホラーを手がけていますが、ゾンビ映画は初めてですよね?
鶴田: そうなんです。元々僕は、80年代にゾンビやスプラッター映画に若者が熱狂しているのを見て、「日本には“怪談”という素晴らしいホラーがあるのにどうして君たちそれを忘れちゃったの?」と思っていたことからJホラーを作るようになったんですね。なので、ゾンビもののお話は僕のポリシーとはあわなくて断っていたんですけど、『Z~ゼット~』に関しては原作を読んで「素晴らしい。やらざるをえないな」と思ったんですね(笑)。
――原作の惹かれた部分はどういうところですか?
鶴田: 一番惹かれたのは、今出てる一巻にはまだ収録されていないんですが、二巻に収録される、主人公の戸田が赤ん坊を抱いて「こんな地獄のような世界でも命が生まれてくるということが希望なのかもしれない」と言うセリフですね。これには胸を打たれましたね。
――そのセリフは映画のテーマにもなっていましたね。
鶴田: そうです。これは絶対映画で描かなければいけないなと。
――相原先生は実際に映画版を観ていかがでしたか?
相原: いま鶴田監督が言ってくださったシーン、元は僕の描いたものなんですが、映画で観て感動してしまいましたね。「いいシーンだなぁ、いいこと言うなぁ」と(笑)。
原作と違う点ですが、戸田がアイパッチつけてたりして、カッコよくなってましたねぇ。最初「アイパッチつける」って聞いたときに「どうなんだろう。今そんな奴いる(笑)?」と思ったんですけど。映像で観てみると「これくらい突き抜けててもよかったのかもしれないな」と思いましたね。
――原作はセクシーなシーンが多かったですけど、映画でもかなり再現されてましたね?
鶴田: とにかく原作が抜群だと思っているので、そこはちゃんと描いています。僕は元々セクシーなものや笑えるものって撮ってこなかったんですけど、そういう意味ではゾンビ映画初挑戦というだけでなく、エロチックな描写も笑いも初挑戦でしたね。とにかく原作の世界を極力くずさないで映像化しないといかん!と思って作りましたね。
――原作のオムニバスのエピソードが見事に一本のストーリーにまとまっていましたね。ストーリーづくりは難しかったのではないでしょうか。
鶴田: 難しかったですよ! もう一人、『悪霊病棟』にも参加した酒巻浩史と脚本を執筆したんですが、二人でブツブツ文句言いながら書きました(笑)。
ゾンビ映画に限らないですが、極限状態に陥った人間って、普通のドラマだったらセックスに走ったりしないじゃないですか。でも相原先生の『Z~ゼット~』は逆なんですね。極限状態だからこそセックスに走る。
――女ゾンビの胸をなんとか揉もうとする中学生たちのシーンは胸が熱くなりましたね!
鶴田: そうそうそうそう(笑)。ああいう状況だからこそああいうことをやり始めるわけですよ。それを違和感なくドラマに描かないといけなくて。「こんな状況で女の裸見たいっていう方向に走るかな……?」っていう。ほかにも、誰彼かまわずやっちゃう女性なんかも出てきますし。でも、そういう“性”に走る行動を説得力を持たせて描かないといけなかった。それが難しかったですね。
相原: 実際、ゾンビ感染が起こって屋内に立てこもるような状況になったら暇っちゃ暇だと思うんですよね(笑)。他にすることないから。
鶴田: (笑)。
――観ていてすごく説得力を感じました。相原先生、中学生のシーンはいかがでしたか?
相原: 良かったですねぇ(笑)。ギャグっぽい要素なんですけど、わざとらしいギャグになっていなくてうまく撮られているなと思いました。ホラーとギャグって似てるところがあると思うんですね。ホラーが作れる人はギャグも作れると思っているので。“間の取り方”と、“どう驚かせるか”が、“恐怖”になるか“笑い”になるかの違いかなと。
鶴田: たしかにこれまでホラーもの撮ってて、怖がらせるのと笑わせるのは紙一重だよねってことは言ってたんですよね。ちょっと間を外したりとか、予想外のことを起こしたりとか。そこの具合で、笑いに行くのか恐怖にいくのかっていう部分は確かにあるので。そういう意味では相原先生の『Z~ゼット~』を手がけたおかげで、新しい作風を引き出していただいたかなと思いますね(笑)。
――『Z~ゼット~』で得たギャグの手法は、今後の作品に影響を与えそうですか?
鶴田: けっこう影響出そうですね! 現場をやっててもすごく面白かったんですよ。中学生役の二人がかなりアドリブを利かせて笑いを取ってくれて。現場スタッフみんなで大笑いして、実際にそのまま採用したものもありますね。
――今回の映画に盛り込まなかったアイデアってあるのでしょうか?
鶴田: 原作の一巻に、ゾンビのちぎれた指で女子高生が行為に耽る切ないシーンがあるんですけど。あれをどうしても入れたかったんですが、うまくストーリーの流れにはまらなかったんですよねぇ。続編をやることになったら是非入れたいですね。
続編を作るかどうかですが、あくまでも原作に忠実に撮りたいので、原作の今後の展開次第ですね。
相原: 僕は鶴田監督にオリジナルで作っていただいても全然構わないですけど(笑)。
鶴田:ええ~!? 返答に困る(笑)!
――原作の『Z~ゼット~』は2巻が7月19日に発売されますね。まだ以後続刊かと思いますが、ラストの構想ってあるのでしょうか。
相原: まだまだ続きますね。毎回読み切り形式で書いていて、同じ世界観なので、ネタ的にもやや苦しくなってきました……。ラストに関しては、構想なしで描いてるんですよね。毎回描きたいシーンだけエピソードにして描いていて、全体の構想というものはないんです。なりゆき任せにしています。
――最後にとても根本的なことをお聞きしますが、お二方は元々ゾンビ物の作品がお好きなのでしょうか?
相原: 僕は好きですね。好きだから描いたというのもあるし。
子どもの頃は吸血鬼とか狼男とか非現実的なものが怖かったですけど、大人になると、そんなのはファンタジーだと分かってしまうじゃないですか。いないと分かるとやっぱり恐怖は薄れてしまう。でもゾンビは“動く死体”であって、“死体”というのは本当にある物でしょう。で、実際怖い物でもある。それがまた動きまわって人間を襲ってくるという。なので、大人になっても怖いものっていうのはゾンビだと思うんですよね。
鶴田: 僕「ゾンビ映画嫌いです」って公言しちゃったりするんですけど、ジョージ・A・ロメロのゾンビ映画は正直全部好きです。
ロメロのゾンビ映画は単に残酷なものではなくて、背景に文明批判があるし、人間ドラマがきっちりある。ゾンビ・パンデミックが起こってひとつの場所に閉じ込められて、その極限状態だからこそ赤裸々に現れる人間性っていうのがあって。
単に残酷な描写だけを真似た作品は沢山ありますが、ゾンビ映画だからこそ発することができるメッセージを忘れてしまってはいけないと思うんですね。
その点で、相原コージ先生の『Z~ゼット~』にはそういったロメロのゾンビ作品のようにメッセージと人間ドラマがしっかりとあった。だからこそ、この原作は世界に発するべきだと。僕がこれを実写化することによって、原作の『Z~ゼット~』を世界に発信するお手伝いができれば、と思っています。なので「ゾンビものは残酷だから嫌いです」という偏見を持ってる方にも是非映画を観ていただきたいし、原作も読んでいただきたいですね。
映画『Z~ゼット~果てなき希望』
7 月 26 日(土)より、シネマート六本木、シネマート新宿 他全国公開監督:鶴田法男 脚本:酒巻浩史、鶴田法男 出演:川本まゆ、木嶋のりこ、田中美晴
原作:相原コージ『Z~ゼット~』(日本文芸社 別冊漫画ゴラク刊)
2014年/日本/カラー 制作プロダクション:Takujiクリエイト 製作・配給:エスピーオー漫画『Z~ゼット~』公式サイト:http://www.nihonbungeisha.co.jp/goraku/z/[リンク]
映画『Z~ゼット~果てなき希望』公式サイト:http://www.cinemart.co.jp/z/[リンク]
(C)2014 相原コージ/日本文芸社・エスピーオー