ホラー通信

INTERVIEW 映画

奇妙な子育て描くスリラー『ナイトボーン 夜哭』 セイディ・ハーラ、ルパート・グリントが語る“親になること”の恐ろしさ

2026.08.28 by

親の望む“いい子”だった少女が邪悪な卵を孵化させる『ハッチング 孵化』で、鮮烈な印象を残したハンナ・ベルイホルム監督。彼女が“親”の側の体験に焦点を当てて描くスリラー『ナイトボーン 夜哭』が現在公開中だ。

本作では、『コンパートメント No.6』のセイディ・ハーラ、『ハリー・ポッター』シリーズのルパート・グリントが新婚夫婦を演じている。妻サーガの故郷フィンランドに移り住み、子供を授かるが、生まれた我が子は何かがおかしい。子供が恐るべき片鱗を見せ始めるなか、仲睦まじい“夫婦”から責任ある“子供の親”へと立場が変わった二人の間には激しい諍いが生まれる……。

セイディとともにインタビューに応じたルパートは、「僕には6歳の子供がいるんですが、実は撮影が始まる直前にもう一人子供を授かっていることが分かったんです」と自身の体験を明かす。「幸い、映画での出来事と同じ経験をすることはありませんでしたが(笑)、その一連の過程をまるで鏡のように重なり合う形で経験していたんです」

さらにルパートは「この映画は、“親になる”ことの特に暗い側面や、それがいかに人を孤立させてしまうかという点を描いています。それは本当に辛い時期になり得るんです。撮影中、その感覚は間違いなく僕の中にありました。どんなキャラクターを演じるにしても、自分自身から多くのものを引き出すわけですからね」と実感を込める。

セイディ演じるサーガが、育児も家族関係も思うようにならず、感情を爆発させて叫び声を上げるシーンは、強烈且つ象徴的だ。出産と産後の苦痛を伴う肉体的・精神的な変化を生々しく演じきったセイディは「あの叫びがどこから出てきたのかは、自分でも分からないんです」とつぶやく。それは、彼女が演じる役柄のみならず、人間そのものの深いところまで潜り込み、自然と発生したものだからかもしれない。

「私が演技について理解している唯一のことは“共感する力”かもしれません。私たちはみんな、“コントロールすること”に執着してしまいがちです。それは“混沌(カオス)への恐怖”から来ているんです。すべてを手放して、混沌を受け入れること。それは子供を持つことや、自分自身が変容することにも似ています。“親”ではなく“一人の人間”としてのアイデンティティを持っていた人が親になるというのは、とてつもなく大きな変化です。だからこそ、それまでの自分を手放して自分を変えることへの恐怖は、本当に、本当に恐ろしいものなんです」

役柄と同じく親である二人に「本作のように我が子が未知の恐るべき存在に感じられたことはあるか」と問うと、揃って大いに共感を示す。

ある意味、四六時中、毎日だと思います。そしてそれこそが贈り物なんです。驚かされるようなレベルで自分の子どもと向き合えているなら、それは素晴らしいことです」とセイディ。

ルパートは、「上の子がまだ赤ちゃんだった頃のことをよく覚えているんですが、頭のてっぺんに柔らかい部分があって、そこが何とも不気味な感じに脈打っていたんですよ。“泉門”と呼ばれるごく当たり前のものだったんだけど、僕たち夫婦はそれを、すごく怖いもののように感じたのを覚えています。赤ちゃんを育てていると、本当に恐ろしくなるような瞬間が間違いなくあります。親になるというのはそういうことなんだと思います」と続ける。

『ハリー・ポッター』のロン役でおなじみだったルパートは、近年、M.ナイト・シャマランの手掛ける『ノック 終末の訪問者』「サーヴァント ターナー家の子守」といったスリラー作品への出演が目立つ。「意識的にそうした作品を選んでるわけではないけれど」と言いつつも、ホラー・スリラージャンルはもともと「大好きなジャンル」だという。

「ホラー映画を観るときって、わざわざ居心地が悪くて落ち着かない気分を味わおうとしてるんですから、独特な感覚ですよね。でも人って、そういうコントロール不能な状態が結構楽しいんだと思います。現実逃避のような、別の世界へ連れていかれる感覚。それは僕がここ最近の作品で楽しんでいることでもあるんです。今回の映画が明確にそのジャンルかは分からないけれどね」

一方セイディは、「大人になるにつれてホラージャンルの映画を楽しめるようになりました。ホラーって、その魅力を最大限に味わうためには観る側が充分に成熟している必要があるんですよね。私がティーンエイジャーの頃に慣れ親しんでいたのは『最終絶叫計画』のような映画だし(笑)」とはにかみ、一番好きなホラー映画は『エクソシスト』と回答。

あの映画は“ホラーがどこに宿っているか”という構成の点でまさに天才的だと思いました。今回の映画にも、それに通ずる何かがある気がしているんだけど・・・・…。私は人間の心理や家族関係といったものを深く掘り下げることに夢中なんです。いわゆる“タブー”とか“禁じられたもの”と呼ばれるようなものが、私たちの関係性のどこに潜んでいるのか……そういう部分に惹きつけられるんです」

『ナイトボーン 夜哭』公開中

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