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強烈なフェイク予告編がついに映画化! 『サンクスギビング』を生んだ『グラインドハウス』をおさらい

2023.12.08 by
Sony Pictures Entertainment (Japan)

『サンクスギビング』を生んだ『グラインドハウス』をおさらい

映画『グラインドハウス』(07)内のフェイク予告編を長編化した、イーライ・ロス監督が贈るホリデースラッシャー『サンクスギビング』が12月29日より公開だ。

予備知識なしに観てもめちゃくちゃスリリングで楽しい一作だが、そもそも『グラインドハウス』がどのような企画だったのか、長編版の本作がいかにして生まれたかについて予習しておくと、公開に向けてよりワクワクしてもらえることだろう。公開から早16年、懐かしの一作になりつつある『グラインドハウス』について振り返っていこう。

ファンにとっては心が落ち着く光景、イーライ・ロスと凶器の組み合わせ。
ファンにとっては心安らぐ光景、イーライ・ロスと凶器の組み合わせ。

クエンティン・タランティーノロバート・ロドリゲスの仲良し監督コンビが生んだ『グラインドハウス』は、2人にとって思い出深い刺激的な映画体験を再現する企画であった。アメリカ各地に存在した“グラインドハウス”と称される劇場では、シネコンでかかるような大手制作の映画ではなく、ホラーやアクションなどブッ飛んだ内容の低予算B級映画が2~3本立てで上映されていたという。制作当時のタランティーノは「今の若い世代はシネコンしか知らなくてかわいそうだ! だからこれを作るんだ!!」と熱弁を振るっている。

『グラインドハウス』は全編3時間超あり、長編の『プラネット・テラー』『デス・プルーフ』、気鋭監督陣による4本のフェイク予告編で構成され、ご丁寧に“いかにも劇場で観ている”感じを味わえる架空のCMまでついてくる。各作品ともレトロな雰囲気を醸しており、フィルムが傷んでいたり、エッチめな場面でフィルムが消失して劇場支配人のお詫びが表示されたりもする(かなり笑える)。

日本では『グラインドハウス』は限定的な上映にとどまり、『プラネット・テラー』と『デス・プルーフ』が長めのバージョンで単体公開された。

目指したのは最高のグラインドハウス

『グラインドハウス』ー『プラネット・テラー』『デス・プルーフ』

グラインドハウス映画は決して出来の良い作品ばかりではないが、タラ&ロドはただ“グラインドハウスっぽい映画”を作るつもりはなかった。グラインドハウス映画の刺激はそのままに、しっかり面白くてキャストも豪華という、贅沢な“最高のグラインドハウス”を目指したのだ。上等な食材で作るジャンクフードのようなものだろうか。それは本来の魅力とは少々異なるかもしれないが、それはそれで魅力的であり、まったくの初心者にとっては深い深い沼への入り口になり得るのである……(多分)。

ロドリゲスが手がけた『プラネット・テラー』は、衝撃シーンが「これでもか!」と押し寄せるグチャドロセクシーゾンビアクション。ドップンドップン腐り落ちていくゾンビと、どうやって撃つんだかサッパリ分からないがカッコよすぎてどうでもよくなる美女の片脚マシンガン乱舞が見モノだ。今や俳優を引退してしまったブルース・ウィリスのノリノリな登場も嬉しい。

タランティーノが手掛けた『デス・プルーフ』はカート・ラッセルが陰湿な悪役を演じるスリリングなカーアクションスラッシャー。車で女を殺すことが趣味の変態ジジイに、ターゲットにされた女たちがパワフルに立ち向かう。お見事すぎるエンディングは爆笑必至。筆者が名画座で再鑑賞した折には盛大な拍手が起きていた。イーライ・ロスが脇役で出演していたりもする。

フェイク予告編も最高でなくちゃ

『グラインドハウス』フェイク予告編

この最高な2作と組み合わさるフェイク予告編も最高でなくちゃいけない。制作を担当したのはイカしたものを作ってくれるに違いない監督陣だ。タランティーノは「観た全員が絶対に本編を観たくなるような最高のB級予告編だ!」とハードルをブチ上げている。

ロドリゲスが手掛けたフェイク予告編は、のちに長編化もされる『マチェーテ』。顔面力が強すぎるダニー・トレホがナタをぶん回しイイ女とイチャコラして爆風とともにバイクで滑空! カッコ良すぎるシーンが連続する、やんちゃなバイオレンスアクションだ。

『マーダー・ライド・ショー』シリーズのロブ・ゾンビが手掛けたのは、『イルザ ナチ女収容所 悪魔の生体実験』(74)のようなセクシーナチス拷問モノをパロった『ナチ親衛隊の狼女』。シェリ・ムーン・ゾンビやビル・モーズリーらロブ・ゾンビ作品おなじみのメンツがトンデモキャラを演じ、飛び道具的なニコラス・ケイジ(!)の登場で笑わせる。

『ショーン・オブ・ザ・デッド』のエドガー・ライトが手掛けたのは名作オカルトホラー『ヘルハウス』(73)っぽく始まる『Don’t』。延々続く「〇〇してはいけない……(Don’t 〇〇)」という神妙なナレーションとともにありとあらゆる“ホラーっぽいもの”が登場し、予告編から映画の内容を読み取ろうとする真っ当な観客を撹乱しまくる。長編化するならかなり苦労しそうな一作だが、曇りメガネ+裸の出で立ちでバブバブはしゃいでいたニック・フロストはぜひとも出してほしいところ。

そしてフェイク予告編のトリを飾るのがイーライ・ロス『感謝祭』である。感謝祭発祥の地とされるマサチューセッツ州プリマスを舞台に、浮かれた人々が殺人鬼に惨殺されていく(ついでにイーライ・ロスも出てきてあっさり死ぬ)。わずかな時間に残酷とヌードと悪趣味を詰め込み、強烈な印象を残す大変けしからん一作だ。これが長編になるなんてコトだぜ。

長編化の前例とハードル

『マチェーテ』メイン

やりすぎぐらいがイイんです。爆風にのってバイクのガトリングガンをぶっ放す『マチェーテ』名場面

先にも書いたが、『グラインドハウス』のフェイク予告編から長編化された前例といえば『マチェーテ』(10)である。予告編に忠実でありつつ、お色気もゴアもアクションも過剰にパワーアップ! デ・ニーロにセガールにジェシカ・アルバとキャストも豪華。「あのバカ予告編がちゃんと長編になっとる!」と好評を博し、続編『マチェーテ・キルズ』(13)も作られた。

さらに、『グラインドハウス』公開記念のフェイク予告編大会で優勝した作品を長編化した、ショットガンを手にホームレスが悪に鉄槌を下す『ホーボー・ウィズ・ショットガン』(11)なんて一作も。人体損壊描写が激しすぎるため観る人を選ぶが、愛すべき主人公を演じたルトガー・ハウアーの名演も効いていて傑作だ。

そしていよいよ『感謝祭』の16年越しの長編化である。ファンに毎年「長編化マダー?」と催促されていた作品であり、ロス自身も乗り気ではあったが、フェイク予告編以上に面白いものを作るのは決して簡単なことではないはず。前例の成功と長年の期待によって更にハードルはあがっている。せっかく長編化しても「フェイク予告編は面白いのに長編版はイマイチだったね」などと思われたら心外であろう。“ホラーの帝王”イーライ・ロスがそれを許すだろうか?

最高なフェイク予告編から最高な映画を作れ!

長編化に取り組んだのは、ロスと共同脚本家のジェフ・レンデル。二人は幼馴染で、フェイク予告編の『感謝祭』を共に作ったチームだ。舞台となったマサチューセッツ州で育ち、劇中で描かれるような盛大な感謝祭が身近なものであった二人にとって、ホラー映画史に残るアイコニックな“感謝祭スラッシャー”を作ることはほとんど使命のようなものである。

予告編に詰め込んだ強烈なシーンをどうやって物語に落とし込むか――脚本の執筆には長い年月をかけた。逆に言えば、長い年月をかけてやっと満足のいくものができたのである。より面白い作品を作るため、二人はフェイク予告編のすべてのシーンを強引に盛り込んだ物語を作るのはやめて、『感謝祭』を“残酷すぎるがゆえにすべてのプリントが処分された作品”ということにし、今回の作品はそれのリブートであるという前提を作った。フェイク予告編のなかでもインパクトの強いシーンを残し、今の時代に沿った新しい物語に仕立てていったのだ。より攻撃力の増した新たな殺戮シーンもたっぷり盛り込んだ。レーティングは堂々のR18+である。イーライ・ロス作品おなじみのSNSネタや痛烈な皮肉も加わって、古き良きスラッシャー映画のムードをまといつつ「イーライ・ロスっぽいな~!」とニンマリさせてくれる作品に仕上がった。

『サンクスギビング』トランポリンで飛び跳ねるチアガール

フェイク予告編にあった衝撃のチアガールシーンは長編版でも!

フェイク予告編から16年、ついに誕生した『サンクスギビング』。日本に先駆けてアメリカほか各国では11月に公開され、高い評価を獲得している。続編の制作が早くも決定し、この新たなホリデースラッシャーは感謝祭シーズンの定番になりそうだ。「スラッシャー映画のフランチャイズを作るのが夢だった!」とイーライ・ロスもお喜びである。

あなたにとっての傑作かどうかは是非とも劇場で観て判断していただけたら幸いである。楽しんでね!

『サンクスギビング』
12月29日(金)全国公開

監督:イーライ・ロス
脚本:ジェフ・レンデル
製作:イーライ・ロス、ロジャー・バーンボーム、ジェフ・レンデル
出演:パトリック・デンプシー、アディソン・レイ、マイロ・マンハイム、ジェイレン・トーマス・ブルックス、ネル・ヴェルラーク、リック・ホフマン、ジーナ・ガーション
レーティング:R18+

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