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『ユートピア 狂宴』ジェームズ・デモナコ監督インタビュー 超過激なラストで目指したのは「オペラ的な誇張されたバイオレンス」

2026.09.24 by

『ユートピア 狂宴』ジェームズ・デモナコ監督インタビュー

一晩だけすべての犯罪が合法になる『パージ』シリーズでアメリカ社会の闇を描いてきたジェームズ・デモナコ監督。シリーズを完結させ、「アメリカについて言いたいことは全部言い切った」という彼は、このたび公開される『ユートピア 狂宴』(9月25日(金)公開)でホラー・スリラージャンルにカムバックしている。コメディアンのピート・デヴィッドソンが主演を務める本作では、老人ホームに臨時で働くことになった非行青年が、一見穏やかなその場所のおぞましい秘密を知ることになる。

『パージ』シリーズでもショッキングなバイオレンスを盛り込んできたデモナコ監督だが、本作では更に激しさを増している。自ら「信じられないほど血生臭い」と表現するラスト25分は、「私がこれまで撮った映画の中で一番好きな部分」だという。そんなデモナコ監督に、ラストの撮影裏話や、“死”を感じさせるロケ地、作品の真のテーマなどについてお話を伺った。

――ラストが特にお気に入りだそうですね。前半はじっとりと不気味なストーリーが進んでいくので、ラストで「ここまでボルテージを上げるんだ!」と驚きましたし、観客としてめちゃくちゃ楽しみました。

ジェームズ・デモナコ監督(以下、デモナコ監督):私もそうですが、このジャンルを愛する観客たちは壮大で血みどろの展開を望んでいるだろうと分かっていました。この物語はスローバーンな展開でずっと感情を抑え込んでいるので、最後に解き放つときは、本当に思いっ切りやらないとね(笑)。

ゴア表現にはかなりこだわりました。CGよりはるかに時間がかかるけれど、実写の特殊効果をたくさん使いたかったんです。特殊効果のスタッフたちが素晴らしい仕事をしてくれて、セットには大量の血が飛び散っていました。インスピレーションになったのはクエンティン・タランティーノ監督の『ジャンゴ 繋がれざる者』の血の表現。あれはすごく美しいですよね。オペラ的な様式美があり、すべてが誇張されていた。不快でただ現実的なものでなく、ブライアン・デ・パルマ監督がやっていたようなオペラ的なバイオレンスをやりたかったのです。

主演のピートもラストの撮影にワクワクしていました。彼が出演を決めたのは絶対にあのクライマックスのためだと思います(笑)。撮影中、「早くあれがやりたい」「待ちきれないよ」「いつやるの?」って何度も言ってましたからね! それに、私自身もラストの撮影をすごく楽しみにしていました。ピートの頭に血をぶちまける役は私が担当することになっていたので(笑)。主演俳優と監督というのは割とピリピリし合うものですからね、私も結構ピートにイライラさせられていたから、血をぶちまけて見事にその仕返しができたわけです」

撮影は“閉鎖されたばかりの高齢者介護施設”で

――舞台となる森の奥深くの老人ホームや、そこに臨時で住み込むという設定もそうですが、『シャイニング』を彷彿とさせる要素やシーンが多々ありますね。

デモナコ監督:すべてのホラー映画がそうかもしれませんが、この作品も『シャイニング』の大きな影響を受けています。原作者のスティーブン・キングはスタンリー・キューブリック監督の映画版を嫌っているけど、私は小説も映画もどちらも大好きなんです。私たちは映画の『シャイニング』を注意深く観て、キューブリックが“オーバールック・ホテル”を映画の登場人物としてどのように描いたかを参考にしました。撮影スタイルは彼とは違うんだけど、私たちもこの映画の老人ホーム“グリーン・メドウズ”を登場人物として描きたかったんです。

――“グリーン・メドウズ”の建物はとても存在感がありました。どんなところで撮影したのですか?

デモナコ監督:ニュージャージー州にある、修道女たちが運営する高齢者介護施設なんです。ちょうど閉鎖されたばかりで、すっかり誰もいなくなった、とてつもなく広い場所でした。そこを見た瞬間、本当にラッキーだと思いましたよ。ぴったりの場所を何ヶ月も探し回っていましたからね。

つい最近まで人が亡くなっていたような、とても不気味な場所だったんですが、私たちは撮影中ずっとそこに泊まり込んでいたんです。多分、あそこは幽霊が出るんじゃないかな。映画に実際に映っているわけではないけどね。トレーラーもないので、みんな亡くなった元入居者の部屋を割り当てられていて、そこの人たちが残していった数々の奇妙な遺品を見つけました。そうして肌で感じていた感覚が映画の雰囲気をさらに盛り上げてくれてくれている気がします。

本作に込めた社会的なテーマ

――老人ホームが舞台のホラーというのは珍しいですよね。どんなところから生まれたアイデアだったのですか?

デモナコ監督:『パージ』シリーズがそうですが、ホラージャンルは説教臭くならずに社会的なメッセージを伝えられる素晴らしい手段なんです。今回の映画は“気候変動”というテーマを持っていて、それをさりげない形で表現しています。ブーマー世代(第二次世界大戦後のベビーブーム世代)が石油をはじめとする地球の資源を奪い続けて、それが現在の気候問題につながっている。劇中にも老いた年代が資源を搾取するという比喩を散りばめています。その世代と若い世代を対立させる舞台として、“老人ホーム”というのがぴったりの舞台だったんです。私は一つのロケーションがもたらす緊迫感が大好きでもありますしね。

――『パージ』シリーズでは富裕層が金銭と引き替えに貧困層の命を搾取するシーンが一番印象に残っています。やはり、持てる者が持たざる者から一方的に搾取する構造に関心がおありなんでしょうか。

デモナコ監督:まさしくそうですね。『パージ』の核心は、権力者や富裕層が、社会的権利を奪われている層や本来ケアすべき層から搾取することにあるんです。どんな社会であっても、そのなかで恵まれない人々をケアすべきなのにね。私は政治的な意識の高い両親のもとで育ったので、社会で何が起きているかを深く教えられてきました。そして、社会が果たすべき責任を果たさない現実を直視してきました。それは私が創作するもののすべてのDNAになっているんです。

ピートは「テキストメッセージでなら弱さをさらけ出せる」

――主演のピート・デヴィッドソンはコメディアンのイメージが強いですが、彼を起用しようと思ったきっかけはなんだったのでしょうか。

デモナコ監督:ピートは「サタデー・ナイト・ライブ」のイメージがあるからホラー映画に主演するのは意外ですよね。私と彼は二人ともスタテンアイランド出身で、近所に住んでいたんですよ。コロナ禍に入る前、彼はコメディ版の『パージ』を作りたがっていて、私がそれを手伝う中でお互いを深く知るようになったんです。コメディアンとしてではなくひとりの人間として、情熱的で葛藤を抱えた若者としての彼を知ることになった。『パンチドランク・ラブ』のアダム・サンドラーのように、コメディアンにはドラマの世界へ飛躍できる才能を持った人がいるんです。ピートもその一人だったんです。

――ピートとの撮影はいかがでしたか?

デモナコ監督:面白かったのは、彼は私に何か言いたいことがあるときに、近くにいても直接言わずにテキストメッセージで言ってくるんですよ(笑)。そのほうが率直に感情をさらけ出せるようです。私は普段あんまりテキストメッセージを使わないタイプだから、撮影現場でメッセージのやりとりに慣れることから始めなくちゃいけなかった。私の娘もときどき同じようなことをするから、世代の違いなんでしょうね。

特に印象的だったのは、目にクランプを装着するシーンの直前ですね。テーブルに横たわり、多数の人物に囲まれて押さえつけられるので、すごく無防備な気分になってしまったようです。撮影の合間に、テーブルの下から「休憩が必要だ、刺激が強すぎる」といった内容のメッセージを送ってくるんですよ。直接的なやり取りではなくメッセージでなら弱さをさらけ出せる、心を開ける。それがすごく興味深かった。結果的にそれでうまくいったし、私たちの良い関係につながったんです。

『ユートピア 狂宴』
9月25日(金)よりヒューマントラストシネマ渋谷ほか全国ロードショー

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