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ホラー通信

SABU監督新作『Miss ZOMBIE』インタビュー ~「ゾンビが居る日常」と「色の無い世界」と「音」

ゾンビホラー通信映画 2013.09.13 18:44by

SABU監督最新作『Miss ZOMBIE』が2013年9月14日より公開される。
SABU監督が監督、脚本、原案いずれも手掛けた完全オリジナル作品は『幸福の鐘』以来、実に10年ぶり。

日常にゾンビが入り込み、人々の生活は、心の形はどう変わってしまうのか。
今回、『Miss ZOMBIE』公開に先立ちSABU監督に話を伺うことができた。

マニアックなファンからは「毒」を求められた

―『Miss ZOMBIE』の構想時期はいつごろでしたか。
去年の8月?9月くらい?いや、もうちょっと前ですね。6~7月でした。

―最近ですね。久しぶりの完全オリジナルである今回の『Miss ZOMBIE』、違った手ごたえなどありましたでしょうか?

今回の作品はもともと低予算作品と決まっていたので、割と初心に帰りました。
最初の『弾丸ランナー』やったときとか、そういう初心に。

(原作付きの作品である)『蟹工船』とか『うさぎドロップ』とか、あのあたりやってから、海外の映画祭とか回ったんです。

『うさぎドロップ』は特にそうですけれども、原作のファンが居るんですね。そういったみなさんも「面白かった」とは言ってくれるし、(興行的にも)結構入ったんです。けれども、それでもね、結構マニアックなファンも多くて「毒が今回なかったぞ」とか(笑)いろいろ言ってる人も居たりして。

低予算で面白い事とか、すごくやりたくなってた時期でもあって、その自分のやりたいことを自由にやれるって環境が今回あったんで、「勝手なことやってもいいか?」って言ったら、「いい」って言うんでやらしてもらおうと思って(笑)

5日半で87シーン全てを撮り終えた

―その低予算というところに関して言うと、今回、スケジュールが5日間と半日で87シーンを撮り終えたと聞いています。

もともとあんまり予算が無いというのを聞いてて脚本書いたんです。
けど、その中でも“定番”は書きたくないし、コメディや笑いで逃げる作品にはしたくなかったんで、できるだけシリアスにはしたいと思ってました。

あと、低予算をウリにはしたくなかったんで、絶対そういう風には見えないようにしようと。

モノクロ、シネスコ、女性主演

―全編モノクロームでした。

モノクロやってみたかったんです、ずっと。監督は多分みんな、モノクロやりたいって人多いと思うんですけど、なかなかやっぱり、勇気が、ねぇ(笑)。
こっちに勇気があっても、プロデューサーにはなかったりね。

―周りがさせてくれない。

今回は単純にきれいとかオシャレとかじゃなくて、モノクロで撮ることに意味を持たせることができたと思います。
描写・演出面で、「そういうのがいいなあ、脚本の上で面白いなあ」と思ってた事が出来たので。

あとモノクロってどこ撮ってもオシャレに見えますね(笑)
スタッフがすごく頑張ってくれたんで、それ以上になりましたけどね、結果的には。

―モノクロに併せ、シネマスコープというフォーマットもとられました。『うさぎドロップ』でもシネスコは使われてましたが、ここ、なにかこだわりとかおありですか?

映画っぽいっていうか(笑)。シネスコサイズは面白いですよ。
テレビで一度『トラブルマン』って深夜の連ドラでもやったことあるんです。普段テレビやられてるカメラマンはそのサイズでやってしまうと、それが癖になるってくらい絵になりやすいんですよ。
上下、こう切ってるだけですごく。

―人間の視界に近いなんて言われ方もされてますけど。

そうなんですよね。

―今回「やってみたかったから」という言い方になるんですかね。モノクロもシネスコサイズも。

そうですね。シネスコ、モノクロ、女性主演ってのも、やってみたかったんですよね。

―そう、女性主演初めてですよね。沙羅さん役の小松さん。

はい。

―小松さんとの出会いについては、きっかけなど?

最初はプロデューサーからの推薦でした。小松さんは本当に良かったですね。すごく良かったんでビックリしました、期待以上だったんで。

―今回、割と新たなメンバー、という印象です。手塚とおるさんはいくつかご一緒されてますが。これは、あえての試みというか、狙いなどはありますか?

そうですね……自分でもいろんなこと経験したいし、自分とまた違うリズムの俳優さんと出会うのも面白いですし。ムカつくときもありますけど(笑)その辺の出会いは楽しいですからね。

音を“引き算”して映像に集中できた

―個人的な印象ですが、SABU監督の作品は、音の使い方も特徴的だと感じています。
今回も沙羅がずっと作業で発している音だったり、悲鳴のような音、そして無音部分……音の使い方がものすごく繊細に感じました。
映像と音の相乗効果に関しては、監督ご自身、強く意識されてますか。

もともと「音楽には頼らないぞ」って前から思ってて。
音楽で泣かそうってこともできるかもしれないけど、そういう手段は最後の手段にとっておいてね(笑)。

実際になってる環境音とか、そういうのがすごい効果的になっていくのは大好きなパターンなんです。

ハリウッド映画とかは、音をどんどん“足していく”ってのがあって、すごい音が出来上がって、それが醍醐味だったりするんですけど、音を“引いて”いく、ってなると映像に集中していく、それだけ緊張感が生まれてるくんで、そこも狙いでした。

―“鼻歌”がすごく耳に残ってしょうがないんです。

鼻歌ねー(笑)。
鼻歌も実際に現場で、「ちょっとやってみましょうよ」って。ああいうの、実は難しいんですよ。メロディーがあるようでない、っていうか。しかもゾンビですしね。それで、普段と変わってないけど、足取りが軽やかになっているような印象。不気味にも見えたり。どっちにも転がるような画でないといけなかったんで。

―伝えるのが難しい場面だったんですね。

割と簡単にやってくれたんで、嬉しかったですよ。

シリアスであるけれど愛情が見えるものにしたかった

―先ほど、笑いにはしたくない、とおっしゃいました。これまでの『SABU FILM』の持ち味には、笑いだったり、人との連鎖、というような要素があったと思います。
『Miss ZOMBIE』では、人間でない生き物である沙羅の「魂」に焦点が合っていたように感じました。
シリアスでなおかつ、こういう魂などに焦点を当てたとしたら、それはどうしてでしょう。

結局、今回の話自体はマイナスなイメージって言うか、暗く終わってるんですけど、なんかどっか「愛」的なもんが残るようにはしたいな、と思ってて。
けど、ありきたりなハッピーエンドにはしたくなかったんです。結果的には暗い話ですけど、そういう愛情のあるものが見えたらいいな、って思っていました。

生活するのって、普通に何かの犠牲を払って暮らしていると思うんです。ガマンしているっていうか。

家族とか特にそんな部分があったりすると思うんです。「ホントはどっかいきたい」とか「子供の世話があるんで自由にならない」とかみんなそれを我慢しながら、バランスとってる。そうしたところへ、ゾンビみたいな変わったのが来たことによって、いろんな欲が出てきたり、変わっていくっていうのはすごく面白いかな、と。

モチーフとしてのゾンビの面白さ

―ゾンビ映画はもともとお好きだったのですか?

あんまり観ないですね(笑)こういうこと言うとあんまりよくないんかな(笑)
ゾンビ、大好きですよ(一同爆笑)

面白いとは思います。でも、あんまり観ないですね。でも、これ(本作)の前に、一回、カプコンのゲームの短いヤツ(『デッドライジング2 オフ・ザ・レコード』PR用の予告編)やらしてもらったときに、何作か観ましたよ。

SABU監督ショートムービー”TOKYO DEADRISING”予告編
http://www.youtube.com/watch?v=ZQBxk8tbIbg
[リンク]

―あくまでゾンビはモチーフとしてお使いになられた、と。ゾンビであった必要とかきっかけがあれば。

記号として、世界中が知ってますからね。「ゾンビ」って言うだけで。それはすごく使いやすいっていうか、決まってるじゃないですか、形がなんとなく。そこまで大幅に形が違わない。そこがおもしろいな、と。

そのゲームの撮影やった時なんですが、みんなゾンビがですね、撮影の合間に休憩してたりするんですよ。お茶飲んだり(笑)そういうのがおかしくて。キャラがみんなね。お疲れ様でした!なんて言われたりするとすごくおかしいんだ(笑)
そういう、ゾンビが普通のことをやるってのがどうかなって思って。ゾンビに傷口が有ったら気になるのかな?普通に縫ってたらどうなのかな、とか。そういうのが最初のほうに浮かんでました。

ゾンビって普通じゃないし、ちょっといろんな部分がキレてるだろうからおかしな行動になる。けど動きや形も含めて、人間らしいというか、そういうのが面白いかな、と思ったのが始まりですね。

もともとは「ゾンビが何かを待っている」画づくりだった

―『Drive』の時のインタビューでは、「場面優先で撮っている」とおっしゃってました。今回「思い浮かんだ画」、「この画を出したいんだ」みたいな場面ってありましたか?

最初に浮かんだのは“何かをずっと待ってる”って設定にしようと思ってたんです。最初は。
何も言わないけど、最後に誰かが、向こうから来るって言うイメージがあったんです。全然違う話になったんですけど、最初はそういうきっかけでした。

何を待ってるのかが、すごく楽しみだったんです。自分で(笑)。
「何くるのかなー」って(笑)結局そういう風にはならなかったんですけど、人間がゾンビっぽくなっていって、ゾンビが人間ぽくなっていく、ってところが浮かんで「あ、来た!」ってところでこっちの話に。

乞食を見た子供の頃の体験

―ゾンビより人間のほうが怖いんじゃないか、って思いました。弱かったり残酷だったり欲におぼれていって。

自分より弱いものには急に強くなるというところは特にそうですね。
どうしてもそういう風に上に立とうとしますしね。昔からいろんなそういう差別とかあると思うんですけど。あんまりそっちに寄りすぎると社会派すぎるんで、微妙なところなんですけど。

―たしかにゾンビが居る日常なんて経験したことがあるはずないのに、本作を見ていてデジャビュというか。

そうそう(笑)
どっかゾンビが昔で言う乞食っぽいというか。子供に石投げられたり、ね。オレが子供のころに居ましたからね、いっぱい。

―ギリギリ、僕の子供の頃にも居ました。石は投げなかったけど居ました。
そういう見下し方って、怖いな、っていうね。

―子どもは特に残酷ですもんね。そうした設定も、どこか懐かしいような印象にしているのでしょうか。

どっか、時代がわからない風に見えてれば面白いなとは思ってました。それはいい方に傾いたって思ってます。ちょっと古い時代っぽいニオイが出たらいいなって。「近代?ん?」みたいな。
見世物小屋とか昔ありましたよね。そういう雰囲気ですかね。

―異形のモノ。

そうですね。結局、撮影時間の制約もあったりして最終的にはなくなったんですけど、彼女が届いて倉庫に運んでいくまでに、荷車みたいなのに乗っけて街の中行くっていうシーンがあって。
そんときにみんなが「ゾンビだゾンビだ」って寄ってくる、っていうのもイメージにあったんですけどね。(笑)

セリフ

―セリフが非常に少なかったですね

観る前に脚本(ホン)読みをやるっていうふうになって、出演者、みんなが来たんですよ。スタッフが気を使って役者さん集めてくれて。

でも、セリフがほとんどないんで(笑)

しょうがないんで、「じゃ、オレ、説明します」って絵コンテ開いて、シーンを一個ずつ全部、絵コンテ通りシーンを「これはココに立って、ここはこうで」って全部ここからこう撮ってこうなります、ってのを説明して(笑)
「ハイ次のシーンは」って2時間ぶっ通しでやったんで、オレ、一番しんどかった(笑)

―稽古じゃないですか。

ほんとですね。そうですね。座らなかったもんな。結局最後までたってましたからね(笑)結局、オレの一人舞台だったっていう良くわからん状態になってましたけど(笑)
あれやったおかげでみんな「すごく良くわかった」って言ってくれたんで。
それがあったからこそ。結局無駄にならなかったんですね。

―そういえば『幸福の鐘』のときも、寺島進さんのセリフがほとんどなかったじゃないですか。やっぱり現場で役者さんと監督で「ああしてほしい、こうしてほしい」というのを都度、コミュニケーション取りながら作られたのですか?

そうですね。
結局、あれも、最後まで俺はセリフあると思ってなかったんで。最後たまたま、どうしようかな、って思った時に「しゃべったらええやん」って(笑)ぶわーっっとしゃべってしまうのはおかしいな、と思って。

―あの場面のメリハリは面白かったです。

オレ、自分がそうですけど、普段、しゃべらなくて全然平気なんで。一日中。うちに帰ってヨメはんにはものすごくしゃべるんで(笑)
そういうところとかが、人間ぽいかな、って。

SABU「ただいまっ!」

―仕上がったばかりでなんですが、次回作の構想とかはおありですか?

一杯ありますね!いっぱいあるんですけどなかなか。いや、頑張りますけど、はい。(笑)

―今回オリジナルでやられて、こういう言い方が正しいかわからないですけど、「ああ、SABU監督が帰ってきた!」みたいな。

(笑)ただいまッ!

―次回作楽しみにしてます。最後にホラー通信、ガジェット通信の映画好きの読者に向けてメッセージをお願いします。

ガジェット通信には「ただいまっ!」って言っちゃうぞ。
ホラー通信には「こわいぞっ!」って(笑)

スタッフ:こわくないです(笑)ホラー通信には、ハードルがあがってしまいます(笑))

じゃ「エロいぞっ!」

スタッフ:それもまた、ハードルが(笑))

お好きなカットかと思いますけどね。見せ過ぎず、エロチックなところ。

―妖艶でした。

もっと行けよ!ってイラつきながら見てほしい(笑)

―そこもあえてだったんですね。

そうですね。

―SABU監督にハメられっぱなしでした。

ありがとうございます。
そういうのあちこちに言ってくださいね!(笑)

―わかりました(笑)、知人にたくさん言います。本日はありがとうございました。

非常に気さくに答えてくださったSABU監督の最新作『Miss ZOMBIE』は、20013年9月14日(土)よりヒューマントラストシネマ渋谷をはじめ、9月21日(土)よりシネ・リーブル梅田、中川コロナシネマワールド、10月5日(土)よりキネカ大森などで順次公開予定だ。

さらに、公開初日である9月14日(土)には、ヒューマントラストシネマ渋谷にてSABU監督、小松彩夏さんによる舞台挨拶も決定している。

http://www.ttcg.jp/human_shibuya/topics/detail/23950 [リンク]

映画「MISS ZOMBIE ミスゾンビ」オフィシャルサイト
http://www.miss-zombie.com/

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