ホラー通信

INTERVIEW 映画

台湾ホラー『呪詛』のチームとタッグ 映画『ザ・カース』宇賀那健一監督インタビュー「怒りを増幅させるような、SNSを取り巻く環境をモチーフに」

2026.01.16 by


『悪魔がはらわたでいけにえで私』、『ザ・ゲスイドウズ』などで知られる宇賀那健一監督と台湾ホラー『呪詛』のチームがタッグを組んだホラー映画『ザ・カース』が1月16日より公開中です。

<あらすじ>東京で暮らす美容師の璃子は、台湾の友人、淑芬(シューフン)の SNS をチェックして強烈な違和感を覚える。淑 芬の背後に髪の長い不気味な女が写っており、「お前ら全員さっさと死ね」と不穏な文章が添えられていたのだ。 淑芬と連絡が繋がらず、台湾人の元カレ、家豪(チャーホウ)に電話をすると「淑芬は半年前に死んだ」と告げられ る。淑芬は浜辺で変死体として発見され、不可解な状況に“呪い”だと噂する者もいたという。 さらに親友のあいりに大量の不気味なメッセージと動画が届く。再生すると、木槌で紙の人形を叩く異様な様子が 映っていた。その日をからあいりには奇行が目立ち始め、ある晩、璃子の眼前で命を絶った。 ついに璃子のもとにも紙人形の動画が届き、次のターゲットは自分だと悟る。呪いの発生地と思われる台湾に向 かった璃子は、迫りくる死より前に怨念の正体を暴き、呪いを祓うことができるのだろうか・・・?

本作の監督・脚本を務めた宇賀那健一さんにお話を伺いました。

——本作とても楽しく拝見させていただきました。「SNSによる恐怖」が描かれていますが、監督ご自身もSNSに対して思うところがあったのでしょうか。

情報の真意が分からないものに対して過剰に反応する、ということがSNS上では以前からあったと思うのですが、一昨年くらいからより強く感じるようになり、それが一つのアイデアとなっています。TwitterがXになり、仕様も変わる中で、タイムラインの内容が変わったことも影響しているなと思います。僕のこれまでの作品では愛や友情を描くことが多かったので、人の死を描くにあたって“怒り”が必要だと思い、人々の怒りを増幅させるようなSNSを取り巻く環境をモチーフにしようと考えました。

また、僕の知り合いが友人を亡くした後に、SNSアカウントがまるでその方が生きているかのように更新されていて、それがイタズラなのか、良かれと思ってやっていることなのか、分からない、と話していたことがあって。その事象と、呪いを掛け合わせた映画を作ろうと思いました。SNSが今も更新されているということは、おそらく人が介在しているわけですが、なぜそんなことをしているのか、その意図が見えないことが一番怖いなと。

——嫌ですけれど、まだ「お金目的」「フォロワー数目的」の様な分かりやすい理由があったほうがまだ納得出来るというか…。

「意図が分からない」ことって恐ろしいですよね。

——台湾ホラー『呪詛』のチームとタッグを組んでいらっしゃいますが、『呪詛』はSNSではないものの、人が媒介となって呪いを広げてしまうストーリーでした。本作にも同じ様な呪いの拡散を感じて、すごくゾッとしました。

「呪いを怖い」と思う人間の心理自体に興味があるので、『呪詛』ももちろん好きでしたし、ご一緒出来て光栄でした。元々ホラー映画、ホラー作品が好きなのですが、根底にあるのが「結局人が1番怖い」ということで。今、家でも心霊Youtubeをよく観ているのですが、心霊の怖さそのものよりも、「どうすれば人って怖いと思うのだろう」という方に関心があって。

——監督が先程おっしゃっていた様な、最近のSNSに感じる違和感といったものは台湾スタッフとも共有出来たのでしょうか?

基本的には近い感覚があったと思います。これは台湾に限らず、世界的にその傾向があるのかなと。ただ、日本のSNS事情はちょっと特殊で、Xが強かったりしますよね。匿名性の高いSNSが強くて、よく言えば“奥ゆかしさ”があるのかもしれないけれど、“陰湿”とも置き換えられるかなと。日本と台湾の違いというよりも、日本と他の国の違いもあってそこは面白かったです。

——その他、台湾チームとご一緒してなるほどな、と驚いたことなどはありますか?

幽霊に対する考え方は本当に違うなと思いました。日本より圧倒的に幽霊や呪いが信じられていて、本作に登場する “赤い服の女” も台湾での幽霊のイメージなんです。日本だと幽霊は白い服を着ていることがイメージとして強いと思うのですが、台湾では赤い服で、呪いや怒りが強いほど濃い赤で表現される。その中でも一番怒りや怨念を伴う亡くなり方が首吊り自殺だと信じられていて、恐ろしい幽霊は長い舌が出ているということになります。なので、フィクションだとしてもそういった幽霊をヴィジュアルとして撮ること自体も難しくて。
本作では、コミカルな部分を取り入れていて、実際に、アメリカやヨーロッパで上映すると笑いが起こりますし、インタビュー取材でも「コメディとホラーの両立をどうしているか」ということをほぼ100%聞かれます。でも、台湾ではこの造詣に本当に恐怖を感じているのだなと現場で感じていました。撮影許可が降りなかったりもするので。

——儀式のシーンも本当にアガりましたが、撮影は大変だったのではないでしょうか。

撮影場所に使わせてもらった場所は、実際のお寺ではあるんですけれど、ああいう儀式が行われるわけではなくて。ただ、台湾の技術部の方が色々と勉強してくださって、悪魔や幽霊を祓うお仕事をしている人に話を聞いたりして。
先程、台湾の方は幽霊や呪いを本気で信じている人が多い、という話をしましたが、“悪”や“悪魔”に対する考え方は意外と柔軟でした。僕らは描き方に正解を求めてしまうことがあるけど、「色々なパターンがあるから自由に考えていいよ」と言ってくれて、様々な宗教が混在しているからこそなのかな?と感じたりもしまいた。
儀式のシーンでは、実際にこれが起きたらめちゃめちゃ怖いけれど、映画として観るとちょっと笑えるな、というくらいのルックを目指していました。

——恐怖描写はもちろん、主人公・璃子をはじめとする登場人物たちの絶妙な“嫌さ”の人間描写が素晴らしかったです。

主人公たちの反応とか、行動、怖いですよね。全員“偽善者”として描きたいなと思っていました。呪いが伝播していく恐ろしさと面白さというのは十分理解した上で、他の作品と同じことをやってもしょうがない、“今”ならではの作品を作りたいなと思ったときに、観客の皆さんに「誰が本当は正しいのか分からない居心地の悪さ」を体験してもらいたいなと。この映画を観て、笑っちゃってもいいし、笑っちゃった自分に対しての居心地の悪さもあると思うので。僕の世代よりももっと若い、物心ついた時からSNSが普及している世代がどう感じてくれるかも楽しみしています。

——まさに“今”私が嫌だな、と違和感を感じていることが本作で描かれていて、映画という時間がかかる作品でそれが出来ていることに感動しました。

ありがとうございます。映画が作られる流れも、それ消費する流れも年々スピードが早くなっていますよね。企画から数えると数年かかる映画ですが、出来るだけ現実の世界の事象とタイムラグが無い、新しいものを出していきたいなと思っています。
昨年、ジェームズ・ガン監督の『スーパーマン』を観て、あの規模の作品で、原作もので、企画だけでも長い月日がかかっているはずなのに、“今”を濃く反映していて感動しました。僕もそんなエンターテイメントとしても面白く、現実のムードを描けたら良いなと思っています。

——監督の今後の作品も楽しみにしております。今日は素敵なお話をどうもありがとうございました!

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