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【インタビュー】予測不能の山荘ホラー『KEEPER/キーパー』 オズグッド・パーキンス監督が語る悪夢的イメージのインスピレーション

2026.05.28 by

『KEEPER』ポスター、オズグッド・パーキンス監督写真

昨年『ロングレッグス』『THE MONKEY/ザ・モンキー』が立て続けに日本で公開され、ホラー映画ファンに一躍その名が知れ渡ったオズグッド・パーキンス監督。彼の新作『KEEPER/キーパー』が5月29日(金)より公開だ。

ミニマルな物語が主人公の憂鬱とともに奇妙な広がりを見せる本作。アーティストのリズは、医者である恋人マルコムに交際1周年記念の旅行に誘われ、森の奥深くの山荘へとやってくる。しかし、マルコムが職場に呼び戻され、リズは山荘に一人きりになってしまう。どこか本心が見えない恋人への不安を払拭したい彼女だが、心の奥底にある不安が染み出て可視化されるかのように、奇妙な幻覚が次々と襲いかかる。そんなリズを、驚くべき真実が待ち受けていた……。

コンスタントに作品を発表し、自身の世界観を拡張し続けるパーキンス監督にインタビューを敢行。本作のユニークな制作プロセスや、悪夢的恐怖表現のインスピレーションなどについて伺った。好きな日本のホラー作品についても語ってくれている。

※ネタバレ部分の前に注意書きあり

<予告編>

オズグッド・パーキンス監督インタビュー

――本作は珍しい作り方をされたそうですね。脚本家のニック・レパードから徐々に脚本が届く形だったとか?

オズグッド・パーキンス監督:前作『THE MONKEY/ザ・モンキー』のあと、チームのみんなとの仕事が楽しくて「もう一本映画を作ろう」ということになりました。資金も時間もほとんど無かったんだけれど、映画作りに対するチームみんなの愛とインスピレーションと熱意があった。ニック・レパードが脚本を書き出したのと同時に、あらゆるパートを進め始めたんです。互いに並行して線路を走っている感じでしょうか。なので、撮影に入る頃には完成した脚本が存在していました。

当初のアイデアは“人間関係にまつわるホラー映画”、これだけです。というのも、時間がないので撮影拠点を移動することはできない。ロケ地は一箇所。そうするとキャストは少人数になる。キャストが少人数なら、人間関係をより深く描ける映画にできる。そこで、人間関係をテーマにした映画になったわけです。

パーキンス監督:ニックが脚本を書き始めてページを送ってくると、私がフィードバックを出し、彼が書き直し……という双方向のやり取りを繰り返していきました。そして後に俳優たちもそのプロセスに加わった。ストーリー展開はとてもシンプルでストレートなものです。カップルがロマンチックな週末旅行に出かける。彼は街に戻らなければならず、彼女は取り残されて、どうにか一人で過ごす。それだけです。私たちはバイブスや質感を重視していて、それらが物語を推し進めてくれるようなものになったかなと自負しています。私たちは制約の中で働き、その制約を乗り越えることで、自分たちの道を見出していったんです。

――主人公のリズが目撃する“大きさが異なる2人のミンカ”のように、本作ではシュールレアリスティックな表現が取り入れられています。以前好きなホラー映画に『イレイザーヘッド』を挙げていらっしゃいましたが、デヴィッド・リンチの影響もあるのでしょうか。

パーキンス監督:“2人のミンカ”については、実は私が見た夢がインスピレーションになっています。プロデューサーが目の前にいるんだけど、同じ人物なのに一人は大きく、もう一人は小さかった。夢で見たそのイメージをみんなに話して、あのシーンが生まれました。私が影響を受けたものすべてをひとつひとつ挙げることはできないけれど、デヴィッド・リンチの全作品から影響を受けているのは間違いないでしょうね。私が見聞きしたものすべてが私の中を通り抜けて、また外へと出ていく、一つの大きな流れのようなものなんです。そのなかで、ある特定のものが私を本当に奮い立たせ、全身を刺激して、エンジンを全開にしてくれるのです。

――リズが山荘で見る奇妙な幻覚には、ろくろ首のようなクリーチャーも登場しますね。あれは日本の妖怪からインスピレーションを得たものなんでしょうか。

パーキンス監督:100%、間違いなくそうです。日本のホラーという偉大な伝統への私たちのささやかなオマージュでした。

――日本のホラー作品でお好きなものはありますか?

パーキンス監督:『リング』がベストですね。最高だと思います。すっきりとした明確な呪いの物語で、恐ろしいコンセプトが美しく表現されています。日本のオリジナル版は本当に素晴らしいし、ゴア・ヴァービンスキーがリメイク版の『ザ・リング』で日本の原作から取り入れた部分を見比べるのも好きです。クローゼット(押入れ)の中で発見される少女のシーンは、日本版でもリメイク版でも、私が知る限りホラー映画の中で最高の要素の一つだと思います。それと最近、雨穴の本を読んでいるんです。「変な家」「変な家2」「変な絵」――すごくハマっていますね。

※ここから先は、クライマックスで明かされる真相に触れています。映画の鑑賞後にお読みください。

――映画の冒頭から、女性の苦しみを描いた作品であることが暗示されています。しかし監督はむしろ男性側の有害性について意識していたそうですね。この2つは両輪ではありますが、自身にとって身近な方からアプローチしたということなんでしょうか。

パーキンス監督:そういうことになります。私は女性であることがどういうことか十分に知らないので、この作品では男性の醜悪さを前面に出さざるを得なかったんです。しかしですね、少なくとも私が関わっている映画においては、真実は常に悪役から語られるものなんです。悪役こそが、今起きていることの厳しい真実を体現している。それに、なぜかは分からないけど、私はもともと悪役のキャラクターに惹かれるところがあります。それが私の心理をどう物語っているかはさておきね。

この映画の場合、悪役というのは、物事が自分の思い通りに進むと決めつけている、ある種傲慢な男なんです。もちろん、彼にもある種の脆さや葛藤があるように見えるんだけれど、彼は正しく振る舞うほどには葛藤していない。もしこの物語において、これまで何でもやり過ごしてきた人物がついに逃げ切れなくなるのだとしたら、それこそがこの映画の興味深いテーマになると感じました。何事も難なく切り抜けてきた男が、形勢逆転し、戯言が通用しなくなった時、何が起こるのか。それを検証するのは有意義なことだと思います。

――クライマックスは衝撃的ですね。あの結末は早い段階で決まっていたのでしょうか。

パーキンス監督:最初は決まっていませんでしたね。撮影を終えてポストプロダクションに時間をかけたあと、追加で撮影をする機会に恵まれました。そこで撮影中に浮かんでいたアイデアをしっかり仕上げることができて、あのシーンが完成したという感じです。

地下室にいる魔女のようなあのモンスターたちは、マルコムの人生に出入りしてきた女性たちの流れとつながっているんです。モンスターたちは犠牲者の女性たちを確かに食べるんだけれども、称えてもいるのです。それは食事の前に小さな祈りや感謝を捧げるのと同じようなものです。私たちはそのことをどう表現するか模索していました。

そこで思いついたのが“苦痛の仮面”というアイデアです。特定の文化には“死の仮面”がありますよね。日本だと歌舞伎にもあるかな。モンスターたちが犠牲者の痛みを称え、その痛みを祝うために、“犠牲者の顔”、“苦痛に歪んだ顔”を被る。このアイデアはかなり後になって浮かんだものでしたが、幸いなことにその時点でNEON(制作・配給会社)から少し資金を提供してもらえたので、非常に美しい視覚効果を作ることができました。モンスターたちの顔は、過去の出来事、つまりマルコムが女性たちを犠牲にし、モンスターたちの餌にしたという歴史と結びつけることを意図していました。しかし、モンスターたちはマルコムが思うような単なる“怪物”ではありません。感情があり、誇りがあり、自分たちの行いに対する悲しみを抱えている。私たちは、その方がはるかに興味深いと考え、それを視覚的に表現したいと思いました。そこで、最終的にあのようなクライマックスになったんですよ。

『KEEPER/キーパー』
5月29日(金)より、ヒューマントラストシネマ渋谷ほか全国公開

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