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話題のNetflixドラマ『呪怨:呪いの家』一瀬プロデューサーに聞く「色々な事件も含めて、この時代の闇が浮き彫りになるといいなと思った」

2020.07.13 by

この記事は1年以上前に掲載されたものです。


『呪怨』シリーズ初のドラマ、『呪怨:呪いの家』がNetflixにて全世界配信中。1980年代から90年代の日本を舞台に実際の出来事をヒントにして作られた本作。配信が開始されるや否や「止まらなくて一気見してしまった…」「あの事件やあの事件がモチーフになっていて鳥肌だった」など、ホラーファンはもちろん、“初『呪怨』”という方にもその恐怖が広がっています。

本作のプロデューサーは一瀬隆重さん。『リング』(1998)の脚本を手がけ、ビデオ版『呪怨』から「呪怨」シリーズの多くの監修を務めた高橋洋さんと共に脚本を務めています。Netflixというプラットフォームでホラー作品をどう作り上げていったのか、一瀬さんにお話を伺いました。

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――本作、大変面白く拝見させていただきました! とても怖いのに一気見してしまう魔力を持った作品で、「思い切り怖いものを作ってやろう」という気合いを感じたのですがいかがでしょうか。

一瀬隆重プロデューサー(以下、一瀬):「Jホラーって最近あんまり怖くないよね」と皆さんが言っているのは、ネットの声とかで見てたので、思い切り怖い物を作ろうと思ったのはあります。『リング』とか『呪怨』とか作ってた頃は、「ホラーがやりたい」「ホラーが得意」だという監督がたくさん出て来て、面白いホラー作品をたくさん作る事が出来たんですが、その後は才能ある人と出会えなかったり才能はあってもその人の実力をうまく引き出すことができなくて。なので、今回Netflixと「呪怨」のドラマシリーズをやることになって、高橋洋さんというホラーの天才に脚本を担当していただいて、一から一緒に作品作りをしていったんですが、監督を誰にするのかが一番悩みましたね。映画より時間の長いドラマシリーズは、登場人物の造型が映画より大切だと思っていて。人間ドラマの演出に長けている監督が必要だと思ったので、三宅唱監督に引き受けてもらえたのはラッキーでした。

――高橋洋さんは「呪怨」シリーズに多く携わられていて、たくさんのホラー作品を担当していますが、三宅監督の起用は意外だったと思います。

一瀬:僕自身もここ数年で一番素晴らしいと思った『きみの鳥はうたえる』の三宅監督が参加してくれて、高橋さんと三宅監督の2人が揃った時点で勝ちが確定していたというか、とても満足出来る仕上がりになりました。

――キャスティングも素晴らしかったと思うのですが、こちらはいかがですか?

一瀬:キャスティングについては、監督と僕の間でいつもルールを決めています。監督が使いたいと思っても僕が嫌だといったら無しで、僕が推薦しても監督が納得いかなかったら無しというルールです。三宅監督は俳優さんとの意思疎通を大切にする監督で、俳優さんの三宅監督への信頼感は抜群でした。ホラーっていかにもお芝居だなというのがにじみ出ると怖くなくなってしまうので、演技のセンスがある俳優しか起用したくないという想いがありました。なのでオーディションも500人くらいやって。

――荒川良々さんの優しいのに何か怖い、という雰囲気も絶妙で。

一瀬:荒川さんは決め打ちでお願いしました。そこがNetflixの素晴らしい所だと思うのですが、メジャーな映画配給会社やテレビ局と組むと、きっと「イケメンの俳優使ってくれ」って言われたと思います(笑)。荒川さんとは前に2回仕事していて、コミカルな演技が素晴らしいのに、かつての渥美清さんの様に目は笑っていない感じがすごく(小田島に)合うなと。監督もNetflixもすごくノッてくれて。

――韓国映画とか中年の男性がよく主人公になっていますけど、キャラクターへの深みとか、リアリティがすごいですよね。

一瀬:そうなんですよね。ソン・ガンホとかマ・ドンソクがばんばん主演やっている。ハリウッドもおっさんが主演の映画がたくさんあるのに、なぜか日本だけが男性も女性も若い人を使いたがるんですよね。そういう文化は変ですよね。特に今回Netflixということで世界中の方がご覧になるので、世界に通用する演技力と雰囲気を持った方にお願いしたかったので良かったです。

――小田島のモデルはいますか?

一瀬:特別にモデルにした人はいないのですが、僕が子供の頃に超常現象研究家の中岡俊哉さんという方が、テレビの心霊写真特集などによく出てました。小田島というキャラクターのモデルになったり参考にしたわけでは無いのですが、この中岡さんの事はずっと頭にありましたね。

――確かに昔はたくさんの心霊番組や本が発売されていて、本作の劇中番組の「あるある」感がたまらなかったです。聖美を演じた里々佳さんの迫力も鬼気迫るものがあって。

一瀬:里々佳さんはオーディションで選びました。聖美という役柄はすごく難しくて、女子高生から30代までと演じる幅も広いですし。聖美は皆が知っている俳優さんというよりは、この人誰だろう?と思ってもらえるくらいの方に演じて欲しくて。『呪怨』はビデオ版(2000)が一番怖いとよく言っていただくのですが、怖い理由の一つがあまり知られていない俳優さんがたくさん出ている事だと思うんですね。なので、裏の主人公だとも言える聖美も、視聴者にイメージがついていない方に演じて欲しかったんです。

里々佳さんは演技経験がほとんど無かったのですが、オーディションに来た時から雰囲気があって。他の皆さんが「がんばります!」みたいな感じでも、里々佳さんはちょっと違っていて、暗さというかふてぶてしさというか、独特な空気があったんですね。聖美は闇に飲まれていくキャラクターですが、どこかで「可哀想」と思ってもらわなければいけなかったので、その絶妙なバランスが良かったです。とても頑張って演じてくれて。監督も里々佳さんとはたくさんコミュニケーションをとってましたね。

――そして、柄本時生さんの役柄はかなりの挑戦だったのでは無いかと思うのですが、いかがでしょうか。

一瀬:彼のキャラクターはメインのモデルになっている人物はいるものの、あの時代の雰囲気そのものを表すものにしたかったんです。実在の人物をそのまま描いているわけでは無いので、そっくりショーにはしたくない。そして、小田島と東京拘置所で対面する、お互い座っていて会話だけの難しいシーンを見事に演じてくれた柄本時生さんには感謝しています。観られる方にとってのリアリティをどこまで保てるのかが、ホラーには大事なことです。今回は特に映画よりも長いので、お化けが出て来てビックリというだけの連続では、僕だったら観れないなと思って。お化けも出てくるけれど、そういう事に人間が飲み込まれて、人間が何かをしてしまう。この時代にあった色々な事件も含めて、時代の闇が浮き彫りになるといいなと思って最初の企画を考えていたので。

――海外の方も色々と驚かされる演出、内容ではな無いかと思います。

一瀬:190ヶ国以上で配信されるということで、「呪怨」はもちろん、はじめて日本のホラーをご覧になる方も多いと思います。僕らもNetflixで海外の作品を観て、ビックリしたり関心を持つことってあるじゃないですか。そういう感じで、このドラマを新鮮に感じてもらえたら嬉しいです。逆に僕も他の国のNetflixオリジナル作品がどの様な画質で、クオリティで作られているかはとても意識したので、日本のテレビドラマみたいなぺたっとした画面じゃなくて、もっと映画的な暗い所は暗い、という画作りを目指しました。

――そういったこだわりが出来るのもNetflix作品ならではなのかもしれませんね。

一瀬:「呪怨」がヒットして、テレビ局からドラマにしませんか?とお声がけいただく事はあったのですが、過去にテレビドラマでホラーを作ったときにテレビ局から「怖くしないでくださいね」って言われたんですね。ただ、Netflixの場合は制約が何もないので、逆に難しいところもありました。「何でも出来る中で、どんな事をしよう」と、選択肢が多いからこそ難しくて、でもそれが楽しかった、やっぱり難しいことを実現することの方が楽しいんですよね。そういう意味でも本当に満足の出来る作品となったので、ぜひ多くの方にご覧いただきたいです。

――今日は大変貴重なお話をありがとうございました!


Netflixオリジナルシリーズ『呪怨:呪いの家』
Netflixにて全世界独占配信
監督:三宅唱
脚本:高橋洋、一瀬隆重
出演:荒川良々、黒島結菜、里々佳、長村航希、岩井堂聖子、井之脇海、テイ龍進、松浦祐也、土村芳、柄本時生、仙道敦子、倉科カナ
https://www.netflix.com/ju-on_origins

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