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市川海老蔵さんが企画・主演を務め、三池崇史さんが監督を手がける映画『喰女-クイメ-』。柴咲コウさんが衝撃の“お岩さん”メイクに挑戦している事も話題の本作が、いよいよ8月23日より公開となります。
舞台“真四谷怪談”にキャスティングされた男女4人、浩介(市川海老蔵)、浩介の恋人でスター女優の美雪(柴咲コウ)、美雪の元カレの順(伊藤英明)と新人女優・莉緒(中西美帆)。この4人のなかで交錯する、一途な愛、アソビ、嫉妬、疑惑。人間の恨みを描いたこの物語は、三池監督らしい和風怪奇テイストが存分に散りばめながらも、ホラーだけで終わらない人間ドラマが魅力的な一作です。
本作で、新人女優・莉緒と、舞台“真四谷怪談”内での梅という一人二役を演じたのが、中西美帆さん。映画を観る資金を稼ぐ為の横浜スタジアムでのビール売り、事務所に所属した後に打ち込んだ2年間のレッスン、など華奢で可憐な姿からは想像もつかないほど強い志を持っている女優さんです。今回は、中西さんに映画出演の感想から、女優を目指すきっかけなど色々とお話を伺ってきました。
――映画を拝見して、市川海老蔵さん、柴咲コウさんという豪華なキャスト陣に負けない中西さんのたたずまいに強く惹かれました。『喰女-クイメ-』出演が決定するまでにはどの様な経緯があったのでしょう?
中西:三池監督との面接があったのですが、日常の話だったり、好きな映画の話や、私が横浜スタジアムでビールの売り子をしている時の話をしました。そんなたわいもない話の中で、三池さんに笑わされてばかりで。そんな私の素の表情や話し方を見ていたのかなあと思います。
今回はホラーも初挑戦、一人二役も初挑戦だったのですが、不安よりも、台本を読んだ時に「四谷怪談」が現代劇になっている所が新しくて面白そうだなというワクワクの方が大きくて。今まで誰も見た事の無い映画になるだろうと期待していました。
――確かに『喰女-クイメ-』は人を驚かすだけのホラーでは無くて、人間関係にゾッとする作品というか。
中西:そうですね。もともと「四谷怪談」を知らない方にも“岩”の無念さや“伊右衛門”の酷さが分かりやすく伝わると思いますし、知っていた方は新しいストーリーを楽しんでいただけると思います。何が怖いって人間が一番怖いという所がよく描かれているストーリーですし、女性の方はどこか共感するポイントもあるのでは無いでしょうか。
――中西さんはもともとホラーが苦手という事は無かったのですか?
中西:得意でも苦手でも無く、でもやっぱり観ると怖いな〜と怯えていて。でも今回、ホラー映画に出演させていただいた事で、ホラー映画観ても全然怖くなくなりました。現場を知ってしまったので、登場人物が幽霊に追いかけられているシーンとか「現場は楽しいんだろうな」と思ってしまいます(笑)。
――莉緒/梅を演じるにあたって一番意識した事は何でしょうか?
中西:莉緒は肉食系の女子の役なのですが、私の中にはそういった部分が全く無いので、どう演じようかなと悩みましたが、自分と違うからこそ楽しみでもありました。
――監督からの要望やリクエストはありましたか?
中西:「役やセリフを固めないで欲しい」と言われていました。監督はセリフや演出を現場でどんどん変えていく方なので、そういったスタイルは初めてでしたが、監督を信頼して。後は「動物っぽく演じて欲しい」と言われました。特に莉緖は浩介に積極的に近づく女の子だったので、車の中でのキスシーンも動物が獲物をとらえる様なイメージで。
――あのキスシーンから、映画がスピードを増して展開していくので見物でしたね。ベッドシーンにも挑戦していましたね。
中西:初めてのベッドシーンが海老蔵さんという事でとても緊張していたのですが、現場に行ったら海老蔵さんが想像以上に緊張していらして(笑)。その姿を見たら逆に安心して、リラックスして臨めました。
――映画の中では敵対する関係ですが、柴咲コウさんの印象はいかがでしたか?
中西:柴咲コウさんは昔から憧れの女優さんで、今回共演が決まってとても喜んでいたのですが、ライバル役と言うこともあり最初の頃はわざと距離を持つようにしていました。でも、撮影の後半にロケが千葉だったので海老蔵さんの車で3人でディズニーランドに行きました。
――3人でディズニーランド! パークの中で目立ってしまったのでは無いですか?
中西:海老蔵さんはサングラスをかけてパーカーを被っていたので、無事気付かれずにすみました! 乗り物に一つ乗って、あとはお買い物をして。海老蔵さんと柴咲さんとディズニーランドで過ごすというとっても幸せな時間なのに、その楽しい空間がとても切なく感じてしまって。「なぜか切なく感じます」とお2人に言ったら「莉緖を演じて心が汚れたんだよ」って言われて、その言葉がとても印象に残っています(笑)。
――そんな先輩俳優さんたちとの触れ合いが、これからのさらなる成長につながるかもしれませんね。中西さんが女優を目指したきっかけというのはありますか?
中西:父が映画が大好きで。私は横浜に住んでいるのですが「原節子さんという女優さんが昔横浜に住んでいたんだよ」という話をしてくれて、『東京物語』を観たのが映画を見る様になったきっかけです。『東京物語』の時代は核家族ってそんなにいなかったと思うのに、現代にも通じる問題を描いていて。古い映画なのに現代に通じる不変的なテーマを描いている作品に惹かれます。『喰女』でも東宝スタジオでの撮影があり、そこには三船敏郎さんのモノクロの写真なども飾ってあって、自分がこのお仕事が出来ている事が嬉しいなと
――今後も特に「映画」のお仕事にはこだわっていきたい?
中西:映画は映画館で他のお客さんと一緒の時間を共有する、あの空間はテレビでは絶対に味わえない贅沢なものですよね。もともと観客側にいた映画に今自分が出させてもらっている。だからやっぱり映画って特別でとても大切です。今後も映画を観続けますし、色々な作品に挑戦していきたいなと思っています。
――今日はどうもありがとうございました!
有名女優、後藤美雪主演で企画された舞台『真四谷怪談』。恋人の美雪の口添えで見事に伊右衛門役を射止めた売れない俳優の長谷川浩介だったが、浮気癖で優柔不断な性格が災いして共演者の朝比奈莉緖や美雪の付き人の倉田加代子にまで手を付けてしまう。浩介の浮気に気づきながらも彼を受け入れようとする美雪と不貞の限りを尽くす浩介の現状が『四谷怪談』の岩と伊右衛門のそれぞれの役と一致していくことで、次第に二人は役に異常なほどにのめり込んで行き、芝居と現実との区別のつかない狂気の世界へ陥っていく…。