この記事は1年以上前に掲載されたものです。
11月8日の公開が迫る話題作『ザ・ゲスト』。
『サプライズ』や『V/H/S』シリーズで多くのファンを獲得し2010年代のホラーを担う名コンビ、アダム・ウィンガードとサイモン・バレットがおくる最新作は、“アンノウン(正体不明)・スリラー”と称される異色の作品です。
正体不明の男がある一家を訪れ、家族のなかに溶け込み、次第に周囲を恐怖に陥れていく今作。この物語の特徴的なところは、この正体不明の男が“誰にでも好かれる、ルックス良し・性格良しの超ナイスガイ”ということ。彼の正体とは、そして目的とは。
この異色の作品について、そして作品作りの裏側など、アダムとサイモンのお二人にお話を伺うことが出来ました。
アダム・ウィンガード(監督)&サイモン・バレット(脚本) インタビュー
[写真:アダム・ウィンガード(左)&サイモン・バレット(右)]
――『ザ・ゲスト』非常に楽しませていただきました。日本より一足早くアメリカで公開が始まっていますが、反応はいかがですか?
アダム:今までの作品で一番手応えを感じているよ。今までの作品は、実は賛否あることが多かったんだ。でも今回の作品は観客満足度94%(米サイト『ロッテントマト』調べ)を獲得したんだ。ホラー好きに偏らず皆で観られる作品を目指したから、多くの人に観てもらえて嬉しいね。
――今作に登場するデイヴィッドは、ホラーやスリラー映画でよくある見るからにおそろしいキャラクターではなく、接した誰もが惹かれてしまうという魅惑的なキャラクターです。そんな彼が徐々に周囲を恐怖に陥れていくという設定はとても面白いアイデアですね。
アダム:これはすごく実験的なアイデアだった。“ヒーローであり、悪でもある”というキャラクターが成立するのかというね。観客を混乱させるであろうこの複雑なキャラクターを、主演のダン・スティーブンスはわざとらしくなく、ごく自然に演じてくれたんだ。彼は本当に善でもあり悪でもあって、そのどちらが正解というわけでもない。観る人によってそれぞれ解釈してほしいし、そして何より楽しんでほしいね。
――デイヴィッドと、一家の次男でありいじめられっ子のルークとの間にうまれる関係性は、ターミネーターとジョン・コナーのようでもあって非常に面白かったです。
サイモン:そうそう、『ターミネーター』は今回の作品の基本的なインスピレーションになってるんだよ。『ターミネーター』はもともと、僕たちが子どものときに一番はじめに「映画を作りたい」と思わせてくれた作品だったんだ。80年代のアメリカ映画に大きな影響を与えた作品でもあるしね。でも実は、僕はジョン・コナーが「人を殺すなんていけないよ!」ってグズグズ言ってるのがすっごく嫌だったんだよね(笑)。だから『ザ・ゲスト』では、デイヴィッドがルークに人の殺し方を教えるようにしたんだよ。自分たちなりの現代的なアレンジってやつさ(笑)。
――大胆なアレンジでしたね(笑)。お二人はお付き合いは長いんですか?
アダム&サイモン:ウン!
アダム:コラボレーションを始めたのは2008年だね。そのころ始めたプロジェクトは形にならなかったんだけど、初めて世に出たのは2010年の映画『ビューティフル・ダイ』(2013年日本公開)と、オムニバスホラーの『V/H/S シンドローム』(2013年日本公開)だね。でもそれらはほんとに資金の少ないインディー映画で、それから徐々に予算があがっていったんだ。僕とサイモンがパートナーを組むことによって、一人ではたどりつけないところまで来れたと思ってるよ。
――お二人の作品はいつも使われる音楽が非常にクールで印象的ですよね。作品の恐怖や面白さを非常に引き立てていると思うのですが、なにかこだわりがあるのでしょうか。
アダム:作品のスタイルを決めるのにまず音楽から始めるんだ。二人で「こんな作品をつくろう」と決めて、サイモンが脚本を書きはじめる。その間に、僕の頭のなかのイメージを伝えるために、イメージに合った音楽をどんどん彼に送っていくんだ。だから僕たちが作品を作る上でのコミュニケーションのアイテムになってるんだよ。『ザ・ゲスト』は初めて20曲も使用した作品になった。80年代の雰囲気と現代的なものをミックスしたくて、サウンドトラックもそうなっているんだよ。
――サイモンさんはプロフィールに私立探偵を務める傍ら脚本を書いていたとあって、とても気になりました……。そのいきさつを教えてください。
サイモン:そうそう(笑)。僕が初めてアダムと会った時は、僕はまだフルタイムで働く私立探偵だったんだよ。2000から2010年にかけてやっていたんだけど、それはあくまで生計をたてるためにやってたことさ。映画作るにもお金かかるしね……。
――めずらしい経歴ですよね。探偵業の経験って作品に活かされていますか?
サイモン:すっごく活かされてると思うよ! というのも、ぼくは探偵の仕事が大っ嫌いだったもんで、その反動で「映画を作りたい!」っていう気持ちを高めてくれたんだよね(笑)。実は僕は私立探偵としてかなり成功していたんだよ。でも調査自体はヘッタクソで、その代わりライティング能力は優れていたから、報告書を書くのがすごく上手かった(笑)。だから会社にもクライアントにもすごく好かれてたんだよね。
――興味深いお話をありがとうございました(笑)。今後の作品にも期待しています!
映画『ザ・ゲスト』 11月8日よりシネマサンシャイン池袋ほかにて公開
公式サイト:http://the-guest.jp/[リンク]