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映画関係者・著名人の皆さんにホラー映画のオールタイムベスト3作品をうかがっていく、「ホラー通信」恒例企画です。
今回は、映画『ライトハウス』が公開中のロバート・エガース監督にお伺いしました。
人生のホラー映画ベスト3 ロバート・エガース 編
・『シャイニング』(1980) 監督:スタンリー・キューブリック
・『吸血鬼ノスフェラトゥ』(1922) 監督:F・W・ムルナウ
・『回転』(1961) 監督:ジャック・クレイトン
コメント
『シャイニング』は今までで一番観た映画だと思います。本当に怖い映画ってそんなにないけど、その数少ない作品のひとつですね。“緊張感”について、どんな映画監督もこの映画を勉強するべきだと思う。それほど緊張感の作り方がパーフェクトで、きっちり構築されている。それに加えて演技も素晴らしい。こういう不思議な世界での演技となると、自然な演技ではなく人工的な演技になるんだけど、それが余計怖さを増しているんです。不気味すぎると陳腐になってしまうところが、うまく機能している。私がやりたいこととは真逆のことをやっているんだけどね。もうこれ以上観られないってくらい観ていて、メモを取りながら観たり、スローモーションで観たり、音楽を入れないで観たり、あまりにも観すぎたのでもう怖くないんですが、でも本当に怖い映画のひとつだと思いますよ!
もうひとつは『吸血鬼ノスフェラトゥ』。非常にカリギュラ的なプロットだと思います。20世紀で“神話”というものをホラー映画のなかで作り直した革新的な映画ですね。小さいときに観たんですが、一度観てから取り憑かれたように何回も何回も観ていました。BGVのようにしたりね。マックス・シュレック(オルロック伯爵役)の演技というものが、まさにこの映画を作っていると思います。
ホラー映画のトップ2というのはずっと同じなんですが、3番目は年中変わります。今日の気分では『回転』かな。これは本当にスペクタキュラーな映画。演出が素晴らしく、自分で『ウィッチ』を作ったあとにも観ましたが、年に何回か観たい映画ですね。シネマスコープ(ワイドスクリーン)の映画にすることをスタジオは嫌がったらしいんですけど、クレイトン監督と撮影監督のフレディ・フランシスがこのアスペクト比にこだわったそうで、それがこの作品のストーリーを伝えるのにすごく機能していると思う。あとは今の映画というのはセクシャルなものをはっきり描きすぎて台無しにしているところがあると思うんですが、この映画は性的な部分をほのめかす程度に描くことでトーンアップさせているんですね。クライマックスの、主人公が少年にキスするシーンも本当にゾッとします。
『ライトハウス』
現在公開中