この記事は1年以上前に掲載されたものです。
一年に一晩(12 時間)だけ殺人を含む全ての犯罪が合法になる法律、“パージ法”が施行されたアメリカを描いて人気を博し、シリーズへと発展していった『パージ』。
シリーズの5作目にして、終わりのない“無限パージ”が始まってしまうという恐ろしい最新作『フォーエバー・パージ』が5月20日より公開。この公開に備えて、過去の長編映画全4作を時系列順におさらいしていこう。
1. 『パージ:エクスペリメント』(2018)
日本公開:2019年6月
Film (C) 2018 Universal Studios. All Rights Reserved.
基本的に時系列順に公開されてきた『パージ』シリーズだが、前日譚にあたる『パージ:エクスペリメント』だけは例外。今作では、“パージ法”施行のために行われた恐るべき実験を描き、のちのシリーズで最悪の展開をもたらすパージがいかにして生まれたのかを明かしていく。
経済が崩壊したアメリカで、“アメリカ建国の父”を名乗る新政党NFFAが政権を握っていた。彼らは犯罪抑止を図るために、行動科学者のアイデアを法に落とし込んだ“パージ法”を考案。反対デモが起こる中、ニューヨーク州の孤島・スタテン島で住人たちにパージを行わせる実験を実施する。パージ中に島に残れば報酬を支払い、積極的に参加(=犯罪行為を行う)するならば更に報酬を支払うという。低所得者たちを金で釣り、実験のために命を投げ出させようとしているのは明らかだった。法律が許しさえすれば、人は簡単に暴力行為を行えるものだろうか? この非人道的な実験はなぜ成功し、のちにパージが正式に施行されたのかに注目だ。
2. 『パージ』(2013)
日本公開:2015年7月
Film (C) 2013 Overlord Productions, LLC. All Rights Reserved.
全米初登場No.1を記録した記念すべきシリーズ第1作目では、イーサン・ホークが主演を務め、安全な場所からパージを傍観していた一家が、暴力と憎悪の坩堝に巻き込まれていく様を描いている。
舞台は、現在と同じく2022年。住宅のセキュリティシステムを販売する営業マンのジェームズは、パージ需要のおかげで成績好調。今年のパージも、家族とともに高級住宅街の完璧なセキュリティの自宅で“安全な夜”を過ごすはずだった。しかし、息子のチャーリーがセキュリティを解除し、暴徒に追われるホームレスを匿ってやったことから状況は一変する。パージによってあぶり出される人間の醜さに背筋が凍る一作。
3. 『パージ:アナーキー』(2014)
日本公開:2015年8月
Film (C) 2014 Universal Studios. All Rights Reserved.
一作目では家の中という閉鎖空間での攻防を描いたが、パージの最中、果たして街中はどうなっているのか。夜のダウンタウンを舞台に、スケールアップしたパージの夜を描くのが『パージ:アナーキー』だ。
“パージ法”が施行されたアメリカでは失業率が5%以下、犯罪件数もほぼゼロとなっていた。息子の命を奪った犯人への復讐を目論む男レオ。レオに危ないところを助けられた貧しい親子のエヴァとカリ。パージ開始直前に車のパンクで危険地域に取り残されてしまったシェーンとリズの夫婦。偶然に行動を共にすることになった5人は、生き残りを賭けて街からの脱出を試みる。パージの甘い蜜を吸っていた一家を描く前作とは打って変わり、パージに翻弄される人々をフィーチャーし、パージが社会にもたらした影響をより具体的に描いている。
4.『パージ:大統領令』(2016)
日本公開:2017年4月
Film (C) 2016 Universal Studios. All Rights Reserved.
パージと政治との関係に焦点を当て、現実のアメリカの社会問題を想起させながら、グロテスクな社会と政治の腐敗を描くのが『パージ:大統領令』だ。『パージ:アナーキー』に登場したレオが本作にも登場している。
次期大統領選が近づくアメリカでは、パージが“貧困層や弱者を排除しようとしている”とし、パージ廃止を公約に掲げるローン上院議員らが台頭していた。賛成派と反対派で国内の分断が進むなかで、幕を開けた大統領選。それまでパージでは、特定のランク以上の政府職員は対象外とされてきた。しかし、大統領選のさなかのパージでは、恐ろしくもそのルールが撤回され、パージ反対派のローン議員は命を狙われることとなる。アメリカでは、ドナルド・トランプとヒラリー・クリントンが争った2016年の大統領選真っ只中の独立記念日に公開。現実と映画とがリンクする完璧なタイミングでの公開がウケて大ヒット。現実の大統領選ではトランプが勝利を収めたが、映画では……?
最新作『フォーエバー・パージ』
(C) 2021 UNIVERSAL STUDIOS
いよいよ5月20日に公開となる『フォーエバー・パージ』では、移民増加が社会問題となったアメリカで、人種差別主義の過激派組織の暴走によって時間制限のない“無限パージ”がスタートするというシリーズ最大の悪夢を描いている。暴力行為の収集がつかなくなり、崩壊寸前となったアメリカを前に、メキシコ政府は6時間限りの国境解放を宣言。移民夫婦が雇い主の一家とともに国境を目指すのだが……。
『パージ』シリーズの生みの親であり、今作で脚本・製作を務めるジェームズ・デモナコは、「移民問題はアメリカ人の思想に深い亀裂を生じさせた」と語る。「僕は問いたかった。“こういった怒りをたった1日で収められるのか?”と。答えはノーだった」と、今作の“無限パージ”という恐ろしいアイデアが生まれたきっかけを明かしている。
『フォーエバー・パージ』
5月20日(金)TOHOシネマズ 日比谷、渋谷シネクイントほか全国公開
『パージ』『パージ:アナーキー』
『パージ:大統領令』『パージ:エクスペリメント』
発売・販売元 NBCユニバーサル・エンターテイメント