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美人にしか部屋を貸さないアパートの大家は、夜な夜な通気口から住人の部屋を覗き見ていた……という、ゾクゾクくる設定の1986年のカルト映画『クロール・スペース』。度を越したクラウス・キンスキーの演じっぷりも相まってカルト的人気を誇る作品となった今作は、これまでVHSのみでしか観ることができませんでしたが、このたび晴れて初のDVD&ブルーレイ化。キングレコードより5月18日から発売されております。
キンスキー演じる主人公・ガンサーはアパートの大家。男の入居希望者はアッサリ門前払いし、自分好みの美人であれば即入居を快諾する妙な男であります。美人の多い地区なのかガンサーの強い願望が引き寄せるのか、見事に美人住人が揃ったそのアパートには秘密がありました。ガンサーの秘密の部屋から入れる狭い狭い通路は住人の各部屋の通気口へとつながっており、ガンサーは夜な夜なそこを這いつくばっては住人の生活を覗き見ていたのです。
しかし“覗き”は序の口。ガンサーの真の悦びは“危うい生と死”をその手でもてあそぶこと。ガンサーのアパートには彼が日々制作をし続けるあらゆる“からくり”が存在し、住人たちにちょっとしたイタズラを仕掛けることも、住人を殺害することも、すべて思いのまま。しかし、ガンサーの正体を怪しむ男が現れたために、その甘美な日々にも危機が訪れます……。
お気に入りの住人をのぞき、ときには殺害し、殺害後の儀式をおこない、部屋が空けばまた入居者を募る――自分を満足させるための完璧なルーティンを作り上げたガンサー。仕掛けられたからくりはすべて彼の手作りらしく、何気ないシーンで彼が作っていた物がのちに活用されているのを見ると、「ははあ。ここで使いますか」と妙な感慨すら湧いてしまいます。少しずつ明らかになる彼のバックグラウンドとその奇妙な日常を見ているうちに、「なんだかずっと見守っていたい」と思わせてしまうのが彼の妙な魅力。住人が彼ののぞきに気付きかけたり、彼の正体を追う男が現れたり、彼のルーティンがくずれそうになる瞬間についついこちらも危機感を抱いてしまうのです。
感情や欲望を抑えてコントロールすることが“立派な大人”と言われる世の中ではありますが、映画という創造物のなかでは、その真反対を行く“自分の欲望に忠実なサイコ野郎”がときに強烈な魅力を放つもの。ガンサーというキャラクターは、あなたの心にも残るでしょうか? ぜひ本編を観て確かめてください。
映画『クロール・スペース』はブルーレイ&DVDでキングレコードより販売中です。未DVD化作品『チャーリー 炎の少女』『タンクガール』も同時発売されております。さあ、『クロール・スペース』を観て一緒に叫ぼう! 「ヘイル・ガンサー」!