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「過去は死なない 過ぎ去りさえしない」 パラドックス・スリラー『アンテベラム』 不穏な“違和感”が散りばめられた本編映像

2021.10.25 by

この記事は1年以上前に掲載されたものです。

『ゲット・アウト』『アス』のプロデューサー、ショーン・マッキトリック製作によるパラドックス・スリラー『アンテベラム』が11月5日より公開。本作に散りばめられた“違和感”を垣間見ることが出来る本編映像が解禁となった。

驚くべき仕掛けを持った本作では、現代に生きるヴェロニカという女性の物語をメインに描きながら、アメリカ南部のプランテーションで奴隷として働くエデンという女性のアナザーストーリーを挟み、彼女たちをめぐるパラドックスを描いていく。主演のジャネール・モネイは、ヴェロニカとエデンの両役を演じている。

このたび解禁となったのは、社会学者で人気作家でもあるヴェロニカの、滞在中のホテルでのワンシーンだ。友人と再会して会話を交わし、フロント係にレストランの予約をお願いするというだけの何気ないシーンだが、『ゲット・アウト』や『アス』のような不穏な違和感が散りばめられている。どうやらここに、本作のパラドックスをひも解くヒントがあるようだ。

映像は、ヴェロニカが滞在中のホテルでボーイから奇妙な花束を受け取り、怪訝な表情を浮かべるシーンから始まる。それは、送り主の名前に「X」としか記されておらず、「帰郷を待っています」という謎のメッセージが添えられた不気味なものだった。そんな彼女が宿泊している部屋の名前は「JEFFERSON SUITE」。黒人奴隷制度に反対の意を表していた第3代アメリカ合衆国大統領トーマス・ジェファーソンの名前が冠されている。

さらに、レストランの予約をフロント係に頼もうとしたヴェロニカは、友人のサラに不意に肩を叩かれて驚くも、久しぶりの再会を喜んでいる。だが、その後に交わすお互いの会話には、「無意識なる過去を祓う」「過去は決して死なない」「過ぎ去りもしない」「先祖は夢に取り憑いて生き続ける」「未解決の過去は現在に害をなす」などと意味深な言葉が連なる。

サラと別れたヴェロニカは、フロント係の白人女性にレストランの予約を申し込む。だが彼女は穏やかに微笑みながらも、ヴェロニカを待たせたまま、かかってきた電話応対を始めてしまう。それが黒人女性であるヴェロニカに対して相応しい態度であるかのように。彼女の背後の壁に飾られているのは、白亜の屋敷が描かれた油絵。その屋敷は、黄色のドレスを着た謎の女性を写した場面写真の邸宅によく似ている。ここにも何か意味があるようだ。

本作の冒頭に引用されるのは、20世紀アメリカ文学の巨匠ウィリアム・フォークナーの小説『尼僧への鎮魂歌』に記された「過去は死なない 過ぎ去りさえしないのだ」という有名な一節。ヴェロニカとサラの会話にも印象的に出てくる言葉である。果たしてそれが意味するものとは?

全編に散りばめられたヒントがすべて繋がったときの衝撃を、是非とも体感してもらいたい。

『アンテベラム』
11月5日(金) 全国ロードショー
※TOHO シネマズ シャンテのみ11月7日(日)より

配給:キノフィルムズ 提供:木下グループ

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